渡航前のYoshibei



3月20日(木)、イラク戦争が始まった。「またか…」という感じがしたのと同時に、12年前の悪夢が蘇った。戦争は、世界中に恐怖のベールを被せていく。大手旅行代理店の発表では、この戦争のために2割から3割の海外旅行キャンセルが出ているという。大打撃である。春休みは旅行代理店にとってみれば勝負の期間とも言える。

おまけに、SARS(重症急性呼吸器症候群)が世界を震撼とさせた。カナダや東南アジアでは多数の死者が出るほどの猛威をふるっている。原因不明な病気だけに治療法もなく、対策が練れない。香港では、1万人ほどが在住している高層マンション1棟が隔離されるという事態となった。住民は外出時にマスク着用…。WHO(世界保健機関)も、広東・香港地域への海外旅行の自粛勧告を出した。

戦争の始まる2日前、この戦争の影響を最小限におさえるため(?)、いつも利用しているユナイテッド航空には今回搭乗しないことに決め、韓国第2のエアラインであるアシアナ航空の予約を入れた。アシアナ航空も、この3月1日をもってユナイテッド航空の加入しているスターアライアンスのメンバーとなったので、問題なくマイルは貯められる。それに、日本に就航した当初から乗ってみたいと思っていたので、今回はそういう面での楽しみも増えた。

最初、4月6日(日)出発、10日(木)帰国ということで予約を入れたのだが、その後、4月10日は日本大学松戸歯学部の初講日であることが判明! タダでさえ1学年の人数の少ない学部の教養科目…、さらに翌週(17日)は新入生ガイダンス開催のために休講なので、初回を休講にしたら24日まで講義が出来ないのである。そのため、私の講義を履修する学生がいなくなったら大変…と思い、急遽、帰国を9日(水)にした。結局、今回は3泊4日になってしまう。

私の周囲でも、「何もこんな時期に韓国へ行くことなんて…」という声が出始めた。さらに、追い討ちをかけたのが、3月25日(火)に孔章源さんから届いたメール…。

今朝急に決まりましたが、大使館の都合で展示期間が変更されました。
変更された期間は以下の通りです。
4月14日(月曜日)から18日(金曜日)までの5日間です。

韓国に行ったところで、「韓日映画リーフレット比較展示会」を見ることが出来ない!? 予定を変更したところで、14日はすでに平成15年度の講義が始まっているので、開会式(?)には立ち会えない。16日の水曜日ならばオフなので、日帰りでなら何とか…。あるいは、15日が夜の講義(演習)のみなので、これを休講にさせてもらって…などと色々考えたが、航空券のバウチャーが郵便で届いてしまったので、残された道は…

1.予定通り訪韓する
2.キャンセルする

のいずれかである。結局、私は「予定通り」を選んだ。孔さんには7日(月)か8日(火)にお会いして、展示会の企画に関する取材をさせていただき、資料などがあれば戴こうかな…と考えた次第である。

そこで、今回はあまり研究色を強く出さない訪韓にした。

私の門下生として3年間、帝京大学福祉保育専門学校で私の講義・演習を受け、現在は韓国に母国留学中の呉雅江(オ・アガン)さんにメールを送り、再会を約束した。さらに韓日文化交流會議の李惠美(イ・ヘミ)さん、韓国文化芸術振興院の林秀妍(イム・スヨン)さんに連絡し、韓国芸術総合学校音楽院の閔庚燦(ミン・ギョンチャン)教授にもお約束をいただいた。

そして、昨年の訪韓時に私の助けとなっていただいた模範タクシー運転手の金光哲(キム・グァンチョル)さんに電話すると、

私のかかりつけ医である今井先生から連絡が入っていたとはいえ、金さんがすぐに私の名前を呼んでくれたことは、とても嬉しかった。今回は滞在日数が短く、さらに韓国出発時間が中途半端なので、金さんにはかなりお世話になると思われる。

知人からいつも「ウォンの両替なんて、空港で出発前にすればいいのに…」と言われるのだが、訪韓前に韓国外換銀行で両替するのが、もはや私の “ならわし” となっている。今回は40万ウォンの両替をしておいたが、この時のレートを知って、ささやかな驚き…。40万ウォン両替して、払った日本円が38920円。円が強くなったのか、ウォンが弱くなったのか、とにかく驚いた。

そして、これも “ならわし” となっていることなのだが、パスポート紛失時に備えて証明写真を撮影しておくのである。3月末日にヘアカットして頭がさっぱりしていたので、4月1日に写真屋さん45へ証明用写真を撮りに行った。今回はなぜか、証明用写真の撮影なのに色々なポーズを要求された。おまけに(いつものことだが)「記念のポートレートも撮影しますので、Vサインでも何でもいいですから、ポーズをとってください!」と、女性店員に明るく言われてしまう。この歳になって、それに世界がこんな情勢の中でVサインでもないだろう…と思った私は、笑顔だけで勘弁してもらうことにした。

今回は研究色を強く出さない分、庶民的な視線で韓国・ソウルを見てこようと思う。そして、年内には1冊の本にまとめて…という計画を実行に移したいと思っている。