チョッカルの日−さらばソウル!



昨夜は早めに就寝し、今朝6時半頃に起床した。窓の外がうっすら明るかったのだが、天気まではわからなかった。身仕度を調えながらテレビを観ていると、「ドラゴンボール」をやっているではないか!? シーンは、悟空がジングル村のスノの家からレッドリボン軍のマッスルタワーに乗り込み、メタリック軍曹と闘っている場面…などとスラスラ書けるようになったあたり、“勉強” の成果は現れているみたいである。

7時前にチェックアウトするとすぐ、金光哲(キム・グワンチョル)さんが迎えに来てくれた。外に出ると、雨…。ちょっと寒い。金さん曰く、私が日本に帰ってしまうので、ソウルの空が悲しくて泣いているのだとか…。心にしみる言葉だった。

いつもなら、仁川(インチョン)国際空港までタクシーで向かうのだが、今回はソウル市内にある金浦(キムポ)空港までお願いした。金浦からも羽田行きの便があるが、私は往復とも仁川利用…。実は昨日、金浦空港と仁川国際空港を結ぶ空港連絡鉄道(AREX)が開通したので、早速利用してみようと思ったのである。仁川までタクシーに乗ると8万ウォンほどかかるが、金浦までなら4万ウォン程度。そして、金浦から仁川まで、各駅停車(コミューター)が33分所用で3300ウォン、直通(急行)が28分所用で7900ウォン! 時間も半分程度でソウルから仁川に到着できるだけではなく、金さんにも申し訳ないがお金の節約にもなる。あと3年ほどすると、AREXはソウル駅まで延伸されるので、もっと便利になる。

金さんとは金浦空港国際線出発ロビー前で別れ、AREXの乗り場を探すが表示がない! インフォメーションで尋ねてみると、最初は韓国語だった係の女性が「日本の方ですか?」と日本語で話し始めたので、あえて韓国語を使用するまでもなくなり、日本語で説明を受けた。で、言われた通りにエレベータを下りたが、それらしきものが見当たらない…。仕方なく、警備中の軍人に尋ねると、場所が違うという。言われた通りに行くが、表示がないので、掃除の女性に尋ねたら、丁寧に教えてくれた。その説明によると、AREXの乗り場は地下にあり、地下鉄5号線の方向に歩かなくてはならないということだった。実は私、金浦空港から地下鉄を利用したことがない!…というより、金浦空港を利用したのは10年ほど前に一度だけ。それで、地下鉄の表示にしたがって歩いていると、途中からAREXの表示(というより、「空港連絡鉄道」と書かれた表示)が現れた。地下鉄の改札前に、AREXの改札もあった。地下鉄からの乗り換えは、かなり便利そうである。

お金を節約するなら各駅停車に乗るべきだが、私はあえて直通に乗ることにした。直通は全席指定で、さながら成田エクスプレスのような雰囲気であった。それに、事前に「各駅停車は通勤型の列車で、直通には大きな荷物を置くスペースが充実している」という情報を得ていたので、荷物が増えまくった私には、ちょっと贅沢をしても直通に乗ったほうが良かったのである(どのくらい荷物が増えたのかは、今日の最後のほうにある写真を見ていただくとして…)

自動券売機で時間の指定をすると、列車名および出発・到着時間が表示され、何人で乗るのかを聞いてくる。指示にしたがって画面を押してゆき、最後に料金を投入するかカード決済する仕組みである。私は、8時ちょうど発の列車の座席指定を入れた。チケットは、クレジットカード大のプラスチック製カードになっていて、そこに乗車区間と座席番号が表示されている。Suica定期券のようなものだと思ってもらえるとイメージしやすいと思われる。で、乗る時には改札にタッチし、降りる時は改札の挿入口に入れて回収される。仁川で「この乗車券、ください!」と係員にお願いしたら、「再利用するのでダメです」と言われた。

金浦空港駅構内で写真を撮りまくっていると、駅員が近づいてきた。「マズイ! スパイか怪しい人だと思われたか?」と不安になったが、「ご乗車の場所は、わかりますか?」と尋ねられただけであった。しかし、AREXは東京メトロ南北線のような乗車口になっているので、車体がよく見えず、私の座席がどこなのかよくわからない…。女性アテンダントが「席はおわかりですか?」と尋ねてきたので、乗車券を見せた。すると、「こちらです!」と教えてくれた席は…実際に私の乗車券とは違う車両だった。「ここは4号車ですね。ここに2号車と書かれていますが…」と私が聞くと、「大丈夫です! ここで大丈夫です!」と…。実際、私の乗り込んだ車両には、私を含めて2人しかいなかった。他の車両に乗客がいた形跡もなかった。まだ時間が早いのと、直通なのと、「わざわざ金浦に行くのは面倒」と思われている(これは私の勝手な推測)が相まって、このような乗車率になっているのかも知れない。乗り心地は抜群で、車内放送は韓国語・英語・中国語・日本語の順に流れ、車内ディスプレイにも4カ国語が順に表示されるので、ホッとする。

AREX(空港連絡鉄道)の金浦空港駅改札前AREX(空港連絡鉄道)の金浦空港駅構内AREX(空港連絡鉄道)の乗車口AREX(空港連絡鉄道)の直通列車(急行)車両AREX(空港連絡鉄道)の直通列車(急行)車両内部AREX(空港連絡鉄道)の仁川国際空港駅構内

私を乗せたAREXは、8:28に仁川国際空港駅に到着! 改札を出て、自分がどこにいるのかちょっと迷ったが、出発・到着ビルの正面にいることをすぐに知る。エスカレータで3階に出て、動く通路で出発ロビーに向かう。これは、かなり便利(アクセス最高)である!

ユナイテッド航空のカウンターを探し、並ぼうとするが、「次のカウンターオープンは9時です」という表示が…。出来るだけ体力を温存したかったので(理由は後で述べる)、しばらく並んで待つことにした。9時を5分ほど過ぎてから、チェックイン開始となった。並んで自分の番を待っていると、自動チェックイン機に次々に人が…!? 地上係員に「私はEチケットなので、マシーンは使いたい」と伝えると、「自動チェックイン機は使えるが、あと少しであなたの順番なので、ここにいたほうが良い」と言われる。たしかに…。

チェックインで心配だったのが、オーバーウェイトである。本やマンガをかなり買い、重たい柚子茶も2ビン買った。往きに11kgだった荷物がどのくらいまで増えたのか、恐る恐る荷物を計量器に載せた。「23.2kg」という表示。が、別に「オーバーウェイトです!」などと言われることもなく、「今日のUA884便は、11:55に変更されていますのでご注意ください」というアナウンスをされただけで、何事もなかったかのようにチェックインが済んでしまった。

仁川国際空港ロビー「フォンタナ」にて仁川国際空港ロビー「フォンタナ」にてチェックイン後、いつもならばアチコチの店を回るのだが、今日は自粛。成田から家まで、23kgの預け荷物プラス両手に抱えたバッグを独りで持って帰らなくてはならないので、それで体力を温存したかったのである。今日の私は “すんなり” 手荷物検査と出国審査を受けることにした。2つのチェックの所要時間、わずかに5分! 審査後に搭乗者ロビーを使わせてもらった。仁川では3つのロビーを使えるのだが、今回は「フォンタナ」という場所にした。アメリカン・エキスプレスを差し出すと、「お飲み物(ソフトドリンク)は、こちらから2品お選びいただけます」と言われ、コーラとエビアンを頼んだ。朝食をまだとっていなかったので、8000ウォンのサンドウィッチを頼んだ。他に利用客がいないので、ここで1時間ほどくつろぐことにした。雰囲気は良く、サンドウィッチも良い! 別のラウンジも試してみたいが、ここはなかなか…気に入った。

早めに搭乗ゲートに向かったほうが良いと思い(往きの成田もそうだったのだが、ゲートが一番はじっこだったのである!)、歩き始める。途中、免税店でイカのチョッカル(塩辛)を2箱購入した。この時は、チョッカルに私が振り回されるなどとは思いもよらずに…。

11:25にUA884便の搭乗が開始された。UA884便の最終目的地はシカゴであるため、手荷物チェックがかなり厳しい。もっとも、ユナイテッド航空はアメリカの航空会社なので、往きも厳しかったが…。搭乗口の前で全員、入国管理官の手荷物検査を受けるので、長蛇の列が出来ていた。私の番になって、「あなたは韓国人ですか? 日本人ですか?」と尋ねられる。日本人だと答えると、「オハヨウゴザイマス」と日本語で挨拶された。そして、あれこれバッグの中を調べられ、免税店の袋の中身を確認し始めた。そして、「これは何ですか?」と聞かれ、「キムチ…いや、チョッカルです」と答えると、「チョッカル? チョッカルですか? ダメです! 飛行機に持ち込めません!」と言われる。そして、「なぜ、チェックインの時に申告しなかったのか?」と問われる。「搭乗ゲート前の免税店で買ったのだから、申告できない!」と答えると、隣の係員に「チョッカル、ダメかな?」ととりあえず聞いてくれた。だが、聞かれた係員が「ダメ!」と一言で片づけてしまった。私の応対をしていた係員が「私と一緒に、こちらに来てください!」と言うので(この時点で、一旦チョッカルが没収されている!)、入国審査官と共にエレベータに乗らされた。空港職員しか利用できない、搭乗ゲートと搭乗口フロアを結ぶエレベータに乗れたのだから、それはそれで良い経験をしたのだろうが、やはり最後まで珍道中になるのだと言うことを思い知る。搭乗ゲートに戻らされ、係員がユナイテッド航空の職員に事情を話していたのを聞いた。そして、職員が「あなたの搭乗券を見せてください」と言ってきたので、反抗しないで素直に出すと、「チョッカルは、預かり荷物にしてください。あなたが持っているバッグの中に入れて、バッグを預けてください」ということになった。が、デーバッグにはパソコンが入っており、手提げバッグにはスーツケースに入らなかった本が入っている…。チョッカルを入れるスペースなどないのである。仕方なく、デーバッグからパソコンを取り出した。バッグの中をよく見ると「おやっ? こんなものが…」と、あることに気付いた。大学の講義時に資料を入れて持ち歩く布製の手提げ袋を、「何かのために…」と入れておいたのである。それで、本を手提げ袋に入れ、空いたスペースにチョッカルを入れ、デーバッグごと預けた。そして、階段で先ほどの手荷物検査の場所に戻り、そこにいた係員に「荷物のチェックは終わってます!」と主張したところ、「もう一度、チェックを受けてください」と言われる。「またこの長い列に並ぶのか…」と思っていたら、先ほどの係員が「こちらへどうぞ!」と優先的に私のチェックをしてくれた。そして、「OKです! ありがとう。さようなら!」と声をかけられる。ちょっと嬉しかった。
UA884便の機内にて(何をか思わん)UA884便の機材(降雨の中、ブリッジが連結される)
UA884便は、12時過ぎにタキシングを開始した。往きと同様、帰りも管制官と機長とのやり取りをオーディオサービスで聞いていた。12:10頃に離陸許可が出たのだが、滑走路へ向かう途中で機体が停止した。ヘッドフォン越しに聞くやりとりの中に、「Engine」「 Troubleshooting」という単語が何度も出てきたので「オイオイ…」と思っていたら、本当にエンジントラブルが起きていたらしい。「エンジンに、検査を必要とするトラブルが見つかりました。検査には4〜5分を要します」という機内アナウンスが流れた。最近、ボンバル機の前輪が出ずに胴体着陸…などというトラブルを良く聞くので、「あぁ、私も…」という想いがよぎったが、検査はあっと言う間に終わり、再び滑走路へ向かって機体が動き始めた。そして、12時半に “無事” 離陸! 大気の不安定さもあって、成田到着が14:45だった。もうおわかりだと思われるが、水平飛行に入ってドリンクサービスと同時に軽食サービスが始まった時、私は Can I have 7UP? と、迷わず答えた!

結局、こんなに荷物が増えてしまった…(成田空港にて)成田からは、往きと同様にリムジンバスでYCATに戻った。途中、高速で渋滞があり、予定所要時間である90分を30分ほどオーバーしての到着だったが、旅の余韻を残すのにはちょうど良かったかも知れない。が、YCATに到着してからが大変…。念のため、スーツケースに大きなバッグを入れて日本を離れたので、増えた荷物には対応できたのだが、両肩を中心に私への負担も増えるワケであり…。バスを降りてすぐにカートに荷物を載せ、タクシー乗り場へ行き、タクシーのトランクに荷物を入れ、見慣れた街を走る。土曜の夕方だからか、やけに道が混んでいたので、いつもとは違うルートを通って帰途につくことになった。

最後の最後まで、まさに珍道中という感じで家に帰った。明日から気が抜けないように、シッカリしなければ…と思うのと同時に、心は次の韓国珍道中に向かっている。

ちなみに、「チョッカルの日」というのは、小説『ジャッカルの日』のシャレである。もっとも、『ジャッカルの日』はフランス大統領の暗殺計画を綴った小説であるが…。