無理をしないばすが…
荷物を軽くするはずが…
あまり移動もしないはずが…



実感はなかったが、昨日の “強行” が体にこたえたらしく、今朝はなかなか起きられなかった。アラームを間違った時間に鳴らしてしまい、「まだ、こんな時間じゃないか!?」と二度寝したのが6時前で、次に意識が戻るのが9時半…。昼間の映画と夕方の約束がある以外、何も予定はなかったが、時間をロスした気がしてならない。
今の私に欠けているものたち…
急いで朝食をとり、身仕度を調え、10:20過ぎにホテルを出発した。まず、お土産購入と目の保養(色とりどりの韓紙を眺めるのは、楽しいものである)を兼ねて、仁寺洞(インサドン)へ行くことにした。が、地下鉄で行く気にならず、ホテルから乙支路(ウルジロ)、鐘路(チョンノ)を通って仁寺洞に向かった。「無理しない」という心がけは、この時点で破られた。鐘路にある企業銀行前に、今の私に欠けているもの(必要なもの)がデコレーションされていた。それが、右の写真である。

さて、仁寺洞では美味しそうな柚子茶があったので、2ビンも買ってしまった! 1ビンでも結構重たい。それを2ビン持ち、さらに他の買い物もしたので、肩に荷物が食い込んでくる…。「荷物を軽くする」という心がけは、この時点で破られた。

しかし、ここでの用事があっと言う間に済んでしまった。それで、光化門(クワンファムン)近くの教保文庫(キョボムンゴ)へ行き、CDを探すことにした。CDコーナーに入って最初に目についたのは…「19歳未満購入不可」の表示。日本でもデスメタルなどで視聴制限があったが、韓国では “19歳未満” までが制限される対象らしい。どんなCDが規制対象なのか…と思い、そのコーナーに近づくと、そこには「青少年利用不可」のシールが貼られたビヨンセのCDが!? 他にも、ビースティ・ボーイズやプリンス、ヘビメタやデスメタル系は規制の対象となっていた。こういうフィルタリングもあるのか…。私は、購入予定だったものを3枚入手。昼前だったので、昼食を…と思ったが、とりあえず明洞に地下鉄で戻ることにした。

いきなり、テレビの撮影隊が…!?この男が主役のようです!明洞に到着し、地下鉄出口前のミリオレに出ると…テレビと思われる撮影クルーと人ごみ…。そして、いきなり “犬を連れて妙な格好をした男” が現れ、私の横にいた女性が連れ去られてしまった。一瞬、何が起きたのかわからなかったが、とりあえずその男を追ってみた。テレビの撮影であることは間違いないが、本当に何だったのだろう? そういえば、私は以前からよく明洞でテレビの撮影に遭遇する。それだけ明洞でロケが行われる機会が多いということなのだろうが、かなりの割合でフレームインしている私である。

今回の渡韓前、「ミリオレ7階のフードコートに行って、食事をして…」と予定していたのだが、昨日もそうだったが今日も「内部修理中」という表示があって、フードコートは営業していないのである。この工事は、しばらくかかるのだろうか、とりあえず今回は断念せざるを得ない状態であった。

ナイフにフォークに、スプーンに…それで、同じような雰囲気のある店があったことを思い出し、歩いて向かったが、その店の入っていたビルが再開発中で…。こうなったら、今までに入ったことのない店を探すに限る! アチコチ歩いて、「フォンデュー」というなのトンカツ専門店に入った。その店は、本当にトンカツだけで勝負しているようだったので、入ろうと決めた次第である。メニューには、「フォンデューというのは…」と、店の名前とフォンデューそのものの説明が書かれていた。メニューを読んでいる時、「おいしいトンカツ」「日本式 東京トンカツ」などと、トンカツにも様々なバリエーションを持たせているのが気になったが、「そういえば、韓国でカレーを食べたことがないなぁ…」と思い、カレートンカツ(要するに、カツカレー)をオーダーした。この時点で、私が日本人であることを店員が察し、少し緊張し始めた。この店には、「とんカツ」という日本語が看板に書かれていて、「日本料理店」であるようなアピールをしているフシがある。それで、まさか本当に日本人が来るとは…ということになったのかもしれない。さて、そのカツカレーだが、最初にフォークやナイフ類がたくさんかけられたものがテーブルに置かれ、コーンスープと小さく切られたパンが出された。そして、目の前でチーズが溶かされ、フォンデューを食べてスープを飲みながらメインを待つことになる。そして、カツカレーが運ばれて、「あぁ、やっぱり…」と思った。添え物は、福神漬けでもらっきょうでもなく、キムチとタクアンだった。が、普通にトンカツを食べると、らっきょうが付いてくるらしい。妙だ。隣のテーブルに、若い女性4人組(韓国人)が座り、メニューの説明を受けていた。そして、3人が東京トンカツを、1人がチキンカツをオーダー。実際「東京トンカツって、何が出てくるんだろう?」と気になっていたものだから、隣の女性たちには感謝である。で、出てきたものを見て、全てを悟る。「あぁ、新宿さぼてんのトンカツを真似たな!?」と…。ゴマの入った小さなすり鉢とすりこぎがあり、それを適当に擂ってソースを入れて食せというのである。食後、会計時に「ニホンジンデスカ?」と聞かれる。そして、「味はどうだったか?」「おいしかったか?」と聞かれる。気になっていたのだろう。味は合格点をつけられるものだったので「おいしかったですよ! ご馳走様!」と言ったが、もしかして後日「本場の日本人もうなる味!」なんてことが看板に書かれたらどうしよう…と、いらぬことを心配した。

昨日、映画のチケットを2枚購入したが、その1枚が今日の13:35からのものである。先月中旬に公開開始となり、しばらく興行成績で1位を納めていた『一番街の奇跡』である。CQN明洞シネカノンが日本映画専門館としてさせた…ということは昨日も述べたが、韓国には「スクリーンクオータ制」があるため、それに基づき韓国映画を上映しなくてはならない。もっとも、CQN明洞の5つあるスクリーンのうち、日本映画専門なのは1つだけで、あとは韓国映画そして欧米の映画を上映することになっている。が、日本映画だけを…というのは初のことで、それだけでも十分に話題性があった。上映20分前にCQNに入ると、昨日お会いした男性が…。「おや先生、おはようございます」と言われ、「こんにちは」と返す。「この時間は、“こんにちは” のほうが良いですか?」と質問され、「“おはようございます” は午前中に使います」と答える私…。こんなによくお会いするということは、CQNのスタッフなのかも知れない。この男性、私に自分のことを言葉を選ぶように語り始めた。小学校は植民地時代だったこと、ハングルを隠れて習ったこと、日光で朝鮮時代の鐘を見つけたこと、日本人と韓国人の “歴史” の護り方の違い…などなど。ここで私はインタビュアーに回り、簡単な聞き取りが始まった。その最中、上映開始10分前であるという案内放送が入り、スクリーンへ。

シネカノン明洞の客席観客は、私ひとりだった。もう、大半の人は観てしまったのだろうし、観るなら別の映画館に行くのか…。上映が1日に2回しかなく、時間が合いにくいのかもしれない。とにもかくにも、私ひとりのために『一番街の奇跡』は上映された。ハ・ジウォンイム・チャンジョンの共演で話題だったこの作品は、再開発の任務(要するに、立ち退き)を受けて「一番街」(釜山にあるのだろうか?…もちろん、空想の地)に現れたチンピラのピルジェ(イム・チャンジョン)が、ボクサーだった父の遺志を継いでボクシング東洋チャンピオンを夢見るミョンラン(ハ・ジウォン)と出会い、最初は敵対していたピルジェと一番街の人々が、やがて触れ合いの中に何かが(これから日本で上映されるかも知れないので、あえて詳細には触れないほうがよいだろう)変わっていく…といったヒューマンコメディである。セリフのほとんどが釜山なまりだということで、聴き取れないセリフが多すぎたが、それでも楽しめた。ハ・ジウォンは、日本では『チュオクの剣』のヒロインとして知られている。彼女は今年2月に檀国大学校を卒業したのだが、仕事の合間を縫いながら通い、休学も何度かしているので、入学から卒業までに10年かかってしまった。それがまた芸能ニュースなどで取り上げられ、話題になった。

映画を見終えてすぐ、ソウル中央郵便局へ行き、切手を購入した。そして、ホテルに戻り、体を休めた。「あまり移動しない」という心がけも、この時点でもう修復不可能なほどになっている。少しベッドで横になったが仮にそれが10分程度でも、疲れた体には何よりである。


18時半、ホテルのフロントで李鎭夙(イ・ヂンスク)さんと再会! 今回は三清洞(サムチョンドン)へ行くことになっていたのだが、果たしてどのように行くか…ということをしばし悩む。三清洞の最寄りに地下鉄駅がないワケではないが、明洞からでは地下鉄に乗るメリットがない。それで、バスかタクシーで…ということになったが、往きは路線バスを利用することにした。車内は、退勤時間と重なってちょっと混んでいたが、座ることは出来た。今日の私の行動を語ると、「(バスの行き先がわかるなんて)半分韓国人ではないですか?」と、お褒めの言葉をいただく。そして、下車したバス停が仁寺洞…。今朝、私はバスで行けた道をはるばる歩いてしまったのか…。

三清洞へ向かう途中、鎭夙さんのお知り合い(3名)とバッタリ遭遇! どうやら、久々に会うらしい。それで、隣にいる私のことが…。「違いますよ! 日本大学の…」と、私が紹介される。カップルと間違われたのは言うまでもない。その中の一人が、「ニホンジンデスカ? ハジメマシテ」と日本語で挨拶してくれた。韓国の人は、どうして日本語が出来なくても挨拶の日本語は知っているのだろう? 逆に、日本人が韓国語で挨拶できないのは、言わずもがなである。

アチコチにトッポッキの店で列が出来ているのを見た。どうやら、その周辺はトッポッキ銀座のような所らしい。列を作るのを嫌う韓国の人たちが、列を作ってまで食べたいトッポッキ…。次回は是非、食べてみたい!

そして、景福宮(キョンボックン)の横を通り、軍の病院や国政首相の官邸などのある一帯を通り、鎭夙さんのおすすめの店に到着。ここで、トンドン酒を注文し、チヂミとスジェビ(韓国風すいとん…といった感じ)を食す。美味なり! お腹がいっぱいになる前に、河岸を変えることにした。というのも、この店に入る前、「お汁粉は食べますか?」と鎭夙さんに聞かれて「はい、食べますよ!」と答えたところ、「では、後でお汁粉のおいしいお店に行きましょう!」ということになっていたのである。

「ソウルで2番目においしい店」って…「ソウルで2番目においしい店」の看板部分をアップ!その、お汁粉のお店、ソウルの有名店らしい。店名を「ソウルで2番目においしい店」という。じゃあ、1番目はどこだ?…というのが、とても気になる。韓国の店名は、フランス料理のように “説明的” なものが多いと、かねがね思っていた。例えば、「ヒラメのソテー、香草を添えて」の如くで、韓国風に表現し直すなら「昔の詩人のくつろいだ喫茶店」のような感じである。日本のように「○○屋」のような直球的な店名も存在するが、説明的な店名のほうが目につきやすい。そのお汁粉は、中に餅はもちろんのこと、栗、ぎんなんがあり、上にシナモンがかかっている。この辺は韓国風にアレンジされたのだろう。酒を飲んで甘いものを食べる…というのも、これまた乙なもの。今夜尋ねたお店は、いずれも日本人の尋ねた形跡のない、ソウルっ子たちに愛され、育てられたことのわかる所であった。日本人のあまり訪ねない場所をこうして案内してもらえるのも、韓国人の友人を持つ醍醐味の1つであろう。感謝感謝である。

さぁ、明日はいよいよ帰国! キチンとパッキングしないと…。それにしても、荷物がイヤになるくらい増えているのが気にかかる。