「フラガール」 and フラフラボーイ(=私)



こうなるとは思っていたが…。

昨夜、仁川(インチョン)国際空港で何度も日本大使館公報文化院の孔章源(コン・ヂャンウォン)さんの携帯電話に連絡したのだが、応答なし(参考までに、私の実家にも電話して同じ状況だった)。昨夜電話して応答があったのは「同行者」だけだった。それで今朝、9時前に改めて孔さんに連絡すると、明日からのハズだった出張が今日からに変更になってしまったとのこと。これで、大使館関連の予定はキャンセル!

残念だが、考え直しをすれば、これで少し時間に余裕が生まれたということになる。体調万全ではない私のこと、これであまり無理しないですむのではないか…と思ったが、やはり1秒もムダにしないようにアチコチ駆けずり回った1日だった。

4時過ぎにベッドに入って、起きたのが8時…。いつもの私なら、絶対に起きない! しかし、今は韓国珍道中の最中である。起きられるのであれば、起きる! これ、鉄則!

起きてすぐに、テレビの電源を入れた。相変わらず、『クレヨンしんちゃん』(韓国名: チャングは止められない)をやっている。えらい人気だ。そして、別のチャンネルでは『ドラえもん』が!? 大山のぶ代でも水田わさびでもないドラえもんに、ちょっとした違和感…。さらに、別のチャンネルで『猟奇的な彼女』を見た。場面はちょうど、キョヌが変装して “彼女” に100日目のバラを届けたシーン。さらに、キティちゃんが白雪姫になっているアニメも見た。今日はこの後、白雪姫に街で遭遇することになるのである!

明洞CQN(エレベータ前)明洞CQNの内部9時半前、ホテルを出発。目と鼻の先(徒歩10秒ほど)にあるビルに、シネカノンが日本映画専門館としてさせた、CQN明洞(ミョンドン)がある。ここで私は『フラガール』(韓国では『フラガールス』と、複数形になる)を見る予定であった。日本では日本アカデミー賞6部門受賞で、すでにDVDもリリースされているが、韓国では公開が今月1日からということで、まだまだ話題の作品らしい。韓国人が、常磐ハワイアンセンターの実話に基づいたこの映画をどう観るか、その反応を見たいと思っていた。もっとも、『フラガール』の監督は李相日(イ・サンイル)であり、それがまた話題なのかも知れないが…。CQNに行ってみると、まだスタッフが誰もいない…。それで、ここぞとばかりに映画のチラシをドンドンバッグに詰め込んできた。もちろん、研究用である! ただ、『フラガール』のチラシが全くない! 改めて、午後にでも出直そうと思い、徒歩で乙支路1街(ウルジロ1ガ)へ。そして、地下鉄2号線で三成(サムソン)へ移動することにした。三成にはCOEXモールがあり、シネコンのメガボックスで『フラガール』のチラシをもらい、もしタイミングが合えば、何か映画を観て帰ろうと思ったのである。が、地下鉄に乗車して、自分が間違った方向へ進んでいることに気付いた。地下鉄2号線は環状線なので、内回りだろうが外回りだろうが、間違いなく三成に着く。が、方向を間違えたため、乗車時間に30分以上の差が出た。さらに、乗った地下鉄が度々止まり、さらには徐行運転の繰り返し。イライラすることはなかったが、焦る。こうなったら、車内の観察である! 私の正面に乗っていた高校生らしき女の子と、私の隣に座っていた大学生らしき女の子が、途中から乗り込んできた中年女性2人組にキリスト教の勧誘をされていた。主の偉大さと信仰のありがたさなどを語られていたようであるが、大学生のほうは「あぁ、そうですか…」程度で流してしまい、高校生のほうはマジメに話を聞いてしまったため、20分以上もオバサンと会話することに…。以前、私もよくこの手の勧誘に遭ったものである…あっ、現在もか!?
これは、かなり効果的なディスプレイではないか!?
1時間以上も地下鉄に揺られながら、やっとの思いで三成に到着! 出口を間違えることなく進み、COEXモールへ! ここまでは順調だった。そして、モール入り口に面白いディスプレイを見つけた。携帯電話の会社のものなのだが、巨大な携帯電話を形どり、ディスプレイ部分はテレビになっているのである! そして、その携帯会社の広告が流れ続ける…。素晴らしい! 記念に、パチリ!

さて、目指すシネコンでは、『フラガール』の上映は終了してしまったらしい、ついでに言えば、今回もう1本映画鑑賞しようと思っているのだが、その映画も上映が終わってしまった。まだまだ興行成績を伸ばしている最中だというのに…である。当然、チラシもゲットできず、「何をしに来たのだろう?」という虚しさだけが残ってしまった。この時点で、11:40になっていた。

COEXモールにとどまる理由がなくなったので、再び乙支路1街に戻ることにした。が、地下鉄はどちらの方向に乗っても、えらく時間がかかる…。その点、路線バスならば南から北へ…と最短ルートで運行されている。バス停の場所を見誤るハプニングをご愛嬌として、とりあえず、バスに乗り込んだ。念のため「ロッテ百貨店(方面)に行きますね?」と運転手さんに尋ねる。「はい!」と即答。バスは、40分程度でロッテに到着した。時間的に昼食を…と思ったが、ちょっと時間をずらしたほうが良いと思ったので、買い物目的を持たずにロッテ免税店に行ってみた。買うつもりがないので、ブランド品の値段を見ても余裕である。が、相変わらず日本人だらけである。

韓国の寿司(ちゃんとした酢飯)適当に時間を潰した後、百貨店の地下のフードコートに行ってみた。実は私、ここのフードコートは初めてなのである。グルグル歩き回っていると、回転寿司を見つけた。場所の関係だとは思われるが、日本のものよりも小規模である。が、混雑している上、なぜかシステムがよくわからないので、とりあえずシステムのよくわかる店にすることにした。食券売り場の前にある店舗一覧&メニュー一覧を穴があくほど眺め、「そういえば、韓国で寿司を食べたことってなかったなぁ…」ということを思い出した。初めて渡韓してから、今年で17年…。なのに一度も…である。それで、「特選寿司」(トゥクソンセンチョパプ)の食券を購入し、お店を探した。若い男の職人と、切り盛りの中年女性の2人で運営されていたその店で食券を渡すと、目の前にあるネタを手際よく握り始めた職人さん…。しばらくして、「これ、どうぞ!」とオバサンの声。日本の寿司に比べ、これはちょっと(いや、かなり)握り方が貧相であったが、味はまずまず。「韓国の寿司には、らっきょうが添えられる」と聞いたことがあり、それが事実なのかどうか確認してみたかったが…事実だった。なぜ寿司に粥が付いているのかはわからないが、これはこれで “あり” かな…と。写真のひと揃いで1万ウォン(1400円程度)也!
ヤル気のない白雪姫(の人形)
お腹が満足したところで、鐘閣(チョンガク)方面へ歩き出す。目指すは、永豊文庫(ヨンプンムンゴ)である。永豊文庫はマンガの品揃えが群を抜いていて、よくここで日本マンガの韓国語版を購入する。日本や韓国で話題のマンガを渡韓前に数作品ピックアップしておいたので、あとは現物を探すのみ。そして、永豊文庫への道のりで、白雪姫に遭遇した! 清渓川(チョンゲチョン)に面したビルの壁面に “7人の小人” がいたので「もしや!?」と思ったら、やっぱり白雪姫がいた。人形ではあったが、その “やる気のない表情” に笑えてきた私…。

朝は雨が降りそうな天気で、さらに肌寒さが気になったが、昼食後は太陽が顔を出してきた。気温も上昇し、それだけでも気分がウキウキ! 心配された黄砂も、どうやら大丈夫そうである。

韓国では『神の雫』が “かなり” 人気!!!永豊文庫では、最初に “購入予定のなかったマンガ” が目に入ってきて、思わず手に取ってしまった。『クッキングパパ』である! 今までに韓国で出版されたことはなかったはずだが、いきなり90巻目である! 日本と巻数を合わせているのだが、いきなり過ぎである! さらに、『のだめカンタービレ』『NANA』を順調に見つけるが、『よつばと!』がなかなか見つからない。それで、店内の顧客用パソコンを使って書籍検索をする。すると…さっきまでの私の混乱を嘲笑うかのような結果が出た。さらに、『神の雫』を見つけようと店内を歩く。私はこのマンガを読んだことがないのだが、韓国ではこのマンガの影響でワインブームが起き、さらにワインブームに乗り遅れないように “手っ取り早く” ワインの知識を身に付けることを目的に『神の雫』を読む人が増えたらしい。店員さんに『神の雫(韓国語では『神の水玉』)という日本のマンガは、どこにありますか?」と聞き、「ここですよ!」と教えられた所には…「これって、何かの祭壇?」と思わず言いそうになってしまうほどのディスプレイ! どうしてもこの “祭壇” を写真におさめたかった私は、店員さんに「撮影しても良いですか?」と聞く。しかし、店内撮影はダメだという。しかし、ここで諦めてはならない! 以前、同じような局面をCDショップでむかえた私である。店員さんに「私は社会学者です。日本の大学で講義を…韓国文化を講義しています。講義の参考に、写真が必要なんです!」と事情を説明した。「何のための参考だよ!?」と自分で自分にツッコミを入れたくなったが、ウソではない。すると、「わかりました。1枚だけすぐに撮ってくださいね!」と理解を示してくれた。こういう時、自分の職業にかなり感謝する。その他にも日本マンガの韓国語版をいくつか見つけて購入した。来た道を再び戻っている最中、「あっ、雑誌を買うのを忘れた!」ということで、再び永豊文庫へ。映画やドラマ、テレビガイドなどの雑誌を購入し、また同じ道を戻った。荷物が重いので、ホテルに一旦替えることにした。が、地下鉄に乗ると時間がかかるので、ホテルまで歩いた。

14時半過ぎにホテルに戻り、部屋の前に着くと、ルームクリーニングの道具があった。そこで、「この部屋、(掃除は)終わってますか?」と聞くと、「終わりました!」とのこと。部屋はキレイになっていた。買ってきた物をベッドの上にあけ、確認する。これで、帰りの荷物はバッグが1つ増えることが確定した。

朝、無人だったCQNに行き、カウンターで「予約できますか?」と尋ねると、大丈夫だという。それで、「最初に、今日の『フラガール』、4時55分の。そして…」という私に、係の女性が「まってください。まずはこの『フラガール』から処理します」と言われてしまった。焦るな焦るな! 発券がすむと、「次に、明日の『一番街(の奇跡)』を1枚!」と伝える。すると、「どの回にしますか? 1:35、6:10とあります。6時のほうでいいですか?」と話が進んでいた。その時、明日は18時半から約束があることを思い出し、「ダメ! 別の時間にしてください!」と、発券されてしまったチケットを変更手続きへ回した。とりあえず、無事に(?)『フラガール』と『一番街の奇跡』(こちらの映画については、明日詳しく紹介する予定)のチケットを手に入れた。チケットを受け取る時、「『フラガール』のチラシはないんですか?」と尋ねたが、「人気があって、人がたくさん来て…、今はないんです」とのことだった。『フラガール』人気、凄まじい!

チケットをバッグにしまっている時、初老の男性が近づいてきた。そして、「日本の方ですか?」と日本語で話しかけられた。この方、群馬県と埼玉県で仕事の研修を6ヶ月ほどしたことがあり、それで日本語を理解するのだという。「いつ来たのか?」「一人で来たのか?」などといろいろ質問された。「なぜ一人なのか?」という問いに、「私はアチコチ忙しく回るので、一人でないと出来ないんです」と答える。私の職業を教えた上での回答だったため、その方も妙に納得されていた。

チケットを手に入れて、時間を確認する。私の観る回まで、あと1時間45分ある。それで、お土産などを含め、買い物をすることにした。まず、私のお気に入りブランドの1つであるGIORDANOへ! 日本にもショップがあるのだが、すべて関西…。かつては関東にもショップがあったのに、すべて撤退してしまった。それで、今から初夏の前まで着られそうなカーディガンを探す。店員さんに「私に合うサイズと色は、どれですか?」と聞いてみた。すると、サイズはミディアム(M)ですね。色は、これでどうでしょう?」とグレーのものを提案してくれた。なかなか上品な感じの色だった。それで、「これに合うシャツは?」と聞くと、「これなんかは…」と合わせてくれた。即納得した私は、そのまま会計。店の滞在時間、わずかに5分であった。

次に、明洞ミリオレへ。キャラクター商品のチェック&購入である。目指すは “パッチもの” だが、見事なまでに発見できた! 本物も購入したが、パクられたのはsan−xのモノクロブーであった。韓国では、今年の干支が “豚” で、大変に縁起が良いと言われている。特に、今年生まれた赤ちゃんには幸運が巡ってくるということで、韓国中で必死に子作りに励んでいるとかいないとか…。それで、パクられたのだろう。名前も変えられていて “Happy Pig” となっていた。

その後もしばらく明洞界隈をブラブラしていたが、またもや「あぁ、やっぱり…」という経験をした。私が珍道中の際に “指輪” をしているのに気付いた方もいることだろう。過去の珍道中の写真をよく見れば、いくつか指輪が映ったものがある。この指輪には “魔よけ” 効果がある。指輪をしないで珍道中していた頃は、街を歩くたびに「オニイサン、カワイイ子ガイマスヨ!」とか、「イイオ店、シッテマス!」などと声をかけられたものである。「必要ない!」とか「結構です!」と言っても、しつこく話してくる。が、指輪をしていると、そういう輩から声をかけられなくなったのである。今日、荷物が重くて、デーバッグが肩からずり落ちて、ダウンコートの袖がずれ、指輪が隠れてしまった時、「オニイサン…」が始まったのである。私は指輪が隠れてしまったことを把握していなかったので「何だよ、コイツ?」と思いつつ、あえて韓国語で「この後、用事があるから…」と答えて逃げようとしたら、「あぁ、韓国語を話すんですねぇ…」と言って消えていったのだが、その後で手元を見て、袖がずれていることに気付いた次第である。やはり、指輪の効果はスゴイ! ロード・オブ・ザ・リング?

指輪をハッキリ見えるようにして、映画上映の30分ほど前にCQNに戻った。上映10分前に案内放送があり、それで指定されたスクリーンに向かったが、私は前からも左右からもど真ん中の好ポジション。どうやら、私はこの回のチケットの最初の購入者らしい。

ハングルの字幕と共に、『フラガール』が上映開始。やはり、日本語…というか福島弁の微妙な言い回しを韓国語にするのは困難なようで、説明的な翻訳箇所が多々あった。今日が平日で、それも夕方ということで、観客は10名にも満たなかったが、それでも客が作品へ惹きつけられていることは雰囲気でわかった。特に好評だったのが「でですけ」という言葉。これは、栃木や福島あたりの方言で「馬鹿」「マヌケ」のような意味になる。肝心の内容については「まだ観てない!」という方がいるかも知れないということを考慮して述べないでおくが、役者が “役者” ではなく、まさにフラガールに成りきっていたのが印象的だった。40歳になるちょっと前から涙腺が緩んできたのか、何度も涙をこらえながら観た。そして、この映画を観ていて、何かにひたすらに打ち込む素晴らしさを再確認した。が、同時に「成るように成ると思えば、何でも叶うのだ!」ということを思った。それはまた、「肩の力を抜いて、今の自分に出来ることをやってみたら?」と言われているような感じでもあった。そう、ソウルの人たちに接していても、そんなことを言われているような感じになる。実際にそんなことは言われていないのだが、どうも彼らの行動を見ていると、そんな気分になる。もちろん、良い意味で…である。

上映終了後、早速エレベータで1組の夫婦が「でですけ」で盛り上がっていた。が、この夫婦、どうも日本にかなりの知識があるようで、「あれは、フクシマケンのサットリ(なまり、方言)だね」「フクシマケンはトウホクチホウ? ミヤギケンの南?」などという会話をしていた。某局のヘ○サゴンなる番組でアホ丸出しにしているタレントに聞かせてやりたい!

以前、『ラブレター』という日本映画が韓国でヒットした時、中山美穂の「お元気ですか?」というセリフが韓国で流行ったが、今度は「でですけ」が流行らないかなぁ…。

映画館を出て、再び鐘閣方面に歩いてみたが、もう退勤時間で人ごみが出来ていたので、無理するのをやめて、夕飯をとることにした。昨年は行くことが出来なかったのだが、私が必ず行く場所の1つに「シコルパプサン」(田舎の御膳)という店がある。「いじくり回した肉」の店…と言ったほうが通りがよいかも知れない。その店の看板料理名も「シコルパプサン」で、小皿が15品ほどにご飯と味噌チゲがついて5000ウォンという格安定食である。これを食すと、疲れが取れて、珍道中の活力(おかしな表現だ!)が再生されるのである。今夜、久々にシコルパプサンを注文してビックリ! 小皿が18品に増えていた! 何だか、得した気分になった。

無理するのをやめた瞬間、緊張の糸が切れ、肩の痛みが…!? 昨日、今日と、左肩で重い荷物を支えていたため、炎症を起こしてしまったのだろう。湿布は大量に持ってきているが、出来れば明日は荷物を軽くして、あまり移動もしないほうが良さそうである。倒れることはないだろうが…。