最後のおつとめ?



このサイトを韓国内で更新するのも、今日で最後となる。明日は、いよいよ帰国の日…。あっという間に過ぎてしまったような、そんな印象の韓国滞在ではあるが、帰国の日が近づくことが嬉しくもある。今日も、ソウルは一日中気温がマイナスであった。常に氷を貼り付けて街を歩いているような、そんな感じがした。腰が悪い時に、アチコチ歩き回ったり、冷やしたり…と、決して良いことではないのだが、とりあえず、私は元気である。

さて、今朝は8時半に起床し、すぐに身仕度を調えて、9時過ぎにはホテルを出た。韓国最終日の今日は、イベントが2つ(厳密には3つ)予定されている。まず、惠化(ヘファ)駅すぐそばのマロニエ公園内にある韓国文化芸術振興院を訪ね、韓日文化交流会議の李惠美(イ・ヘミ)さんとの会合。そして、振興院の林秀妍(イム・スヨン)さんとの会合…。李さんとの約束は10時だったので、ホテルを出るのは完全に早すぎである。そこで、ちょっと朝食をとってから移動しようと思ったのだが、なかなかこれというお店が開いていない。おまけに、あまり重いものを食べられるような状態ではない。こういう時は、例の屋台作戦である。朝から屋台は出ているハズなので、明洞駅前の通りを探してみた。1件、人の良さそうなお兄さんのやっているおでんの屋台があったので近づいてみると、お兄さんは「オハヨウゴザイマス」と日本語で話しかけてきた。どの屋台でも、おでんは1串500ウォン(50円程度)である。これを1串だけもらって、地下鉄駅へ向かった。

地下鉄4号線で明洞から惠化までは、10分もかからない。約束の15分以上も前に到着してしまうような状態になってしまったので、次の移動手段を考えるため、バス停のバス路線図を見ながら、系統の研究をした。この惠化駅前の…というかマロニエ公園前の道は、とにかくバスの本数が多い。系統数が多いワケでもないのだが、とにかく多い。もともとマロニエ公園は、ソウル大学があった場所である。今から30年ほど前の話であるが、その名残でマロニエ公園前の道は「大学路」(テハンノ)と呼ばれている。

韓国文化芸術振興院さて、バス停で系統の研究をしていたら、ちょうど約束の時間になったので、建物の中に入ることにした。受付のオジサンに来所目的を伝えると、李さんの所まで案内してくれた。いつものことながら、良いオジサンである。そして、1年ぶりに李さんと再会した。日本の「冬ソナブーム」「ヨン様ブーム」などと、そのことに関する韓国での反応を語り合ったのだが、やはり日韓での温度差は確実にあることがわかった。ここでの会話の内容は今後の講義や研究に活かすためにサイトでは紹介しないが、とにかく、日韓の立場の違いは良くわかってしまった。

李さんと1時間半ほど話をして、林さんに内線で連絡をする。そして、林さんのオフィスへ移動する。林さんとも1年ぶりの再会であるが、前回は落ち着いて話すことができなかったので、ゆっくり話をするのは本当に久々である。ここでの会話は、私も韓国語を半分使って行う。韓国で現在人気があることと日本の情勢がちょっと違うこと、韓国の人気ドラマの主題歌の話などなど…。あっという間に12時になっていた。林さんも12時に約束があるということで、私も失礼することにした。

サムジキル次の私の予定は、15時から駐韓国日本大使館公報文化院(日本文化院)で孔章源(コン・ジャンウォン)さんとの会合。時間的に余裕があることもあり、仁寺洞(インサドン)へ向かうことにした。惠化から仁寺洞まではバスで1本であることは、朝のうちに確認済み。そして、仁寺洞は公報文化院と目と鼻の先…。好都合である。バスで仁寺洞に行った目的は、単に時間を潰すことだけではない。仁寺洞は骨董通り的なところであり、韓国の伝統品が手に入りやすいところである。「韓国の紙や布が買いたい」と李さんに話したら、お勧めスポットを教えてもらったので、教えられた通りに道を歩く。教えられたスポットはサムジギルという新しくできたビルで(李さんの説明によると、先月あたりに完成したらしい)、建物を螺旋階段でグルグルと歩いているうちに最上階に来るような面白い作りのビルである。その螺旋の周りにお店がひしめき合っている。まず、かなり寒いので地下に入ることにした。ここで紙を扱っている店を探したが、どうも私がイメージしたものとは違う。が、ちょっと心を奪われた焼き物があったので、1つ購入する。「明日、日本に帰るので…」と、かなり頑丈にラッピングしてもらう。そして、全てのお店をグルグル見て回り、最上階へ。そこには、石焼きビビンバと焼き肉のお店があった。入店すると、かなりの混みようだった。人気があるらしいが、日本人は私だけのようである。しかし、テーブルに置かれているメニューには、しっかり日本語が書かれているあたり、仁寺洞が紹介されていないガイドブックがないことからも、日本人客も来ることは来るのだろう。私の座ったテーブル以外には、メニューが2種類置いてある。しかし、私の所には一品料理のメニューだけで、食事のメニューがない! 店員を呼ぼうと後ろを振り返ったところ、店員の使う机の上にメニューがあったので、勝手に取る。そして、「テジカルビ(ブタカルビの焼肉)の定食をください」とオーダーすると、「すいません、それは2人様からになります」と…。たいてい、私の旅は一人である。フレキシブルに動けるという利点がある反面、2人以上でないとオーダーできないものが多く、さらに写真を撮る時にもかなりの苦労を要する。韓国に来て、ここ数年は焼肉関係を食したためしがない! 一人では断られてしまうのである。仕方がなく、タコの石焼きビビンバをオーダーする。隣のテーブルでオバサンが2人、石焼きビビンバをかき回し始めた。それだけなのに、なぜか私はむせてしまった。ビビンバの湯気が私のほうに流れてきて、その刺激でむせたのである。とすると、私のオーダーしたビビンバも、かなり強烈なものが来るのでは…という予想は、見事に当たった。辛子味噌の湯気でむせながらも、必死にかき回し続ける私…。しかし、味はなかなかであった。

食後、サムジギルを出て、仁寺洞を歩き、きれいな布のコースターを見つけた。これはお土産に良さそうだ…と、数セット購入する。この時点で13時半。次の約束まで1時間半ある。

そういえば、今日はまだ新聞を買ってなかったなぁ…ということを思い出し、コンビニに駆け込んだ。LG25には私の読みたい朝鮮日報と文化日報の両方がなかった。セブンイレブンに行ったら、文化日報だけはあったので、とりあえずそれを購入する。そして、アチコチ探してみたのだが、朝鮮日報が見つからない。仁寺洞では見つけられないと思った私は、仁寺洞の終点(または入口)である鐘路3街(チョンノサムガ)まで出てしまった。ここにも地下鉄駅があるので、周辺に売店があるハズ…と思ったのだが、朝鮮日報は見つからない。結局、鐘閣(チョンガク)まで歩いて、やっと朝鮮日報が残っていた売店を発見した。この時点で14:40。もう歩いて公報文化院へ向かうのは寒い&疲れたという理由でイヤになったので、地下鉄を乗り継いで移動した。
日本文化院
そして、15時ちょうどに公報文化院に到着。久しぶりに孔章源さんと再会する。ここでは1時間ほど、孔さんと日韓のアニメや映画の話で盛り上がる。昨年中に行われた日韓交流の参考に…と、公報文化院の機関誌もいただいた。話の中で、今後日本でも公開される予定の韓国映画の情報などもいただいた。さらに、「(韓国)映像資料院へ行ってみたらどうか?」という情報もいただいた。韓国情報文化院というのはどこにあるのか尋ねると、「芸術の殿堂」のすぐ横にあると教えていただいた。芸術の殿堂なら昨日、閔庚燦先生とお会いするために同敷地内の韓国芸術総合学校に行ったばかりである。公報文化院の最寄り駅である安国(アングク)からだと、地下鉄で乗り換え無しで行ける。そこで、せっかくなので映像資料院を訪ねてみることにした。

韓国映像資料院勝手知ったる(?)場所であることと、地下鉄もバスも私が来るのを待っていたかのような状態であったため、40分もかからずに映像資料院に到着。今日は特にイベントもないということで、館内にあるフィルムセンターと、韓国文化芸術振興院の資料室を利用させてもらった。韓国の資料室ではあるが、日本語の文献や雑誌もあった。フィルムセンターで日本のアニメーションの保管記録を調べてみたが、検索でヒットしたのは「クレヨンしんちゃん」だけであった。クレしんの偉大さを思い知った。

その後、昨日と同様に、バスで移動する。ソウル滞在最後に、どうしても行きたい場所があった。それはロッテ百貨店である。もう何度も行っている百貨店であるが、どうしても今日はロッテでなくてはならない理由があった。ロッテ百貨店のレストラン街にある店で、「刺身丼」を食べて旅の締めくくりをしようと決めていたのである。日本には刺身丼などという料理はないのに、韓国の日本料理店ではどこでも堂々と刺身丼を出してくる。おまけに、白身の刺身とレタスだの何だのをコチュジャンで和えて、混ぜ混ぜにして食すのだから、明らかに韓国料理である。この日韓共演を旅の締めくくりに…と考えていた。が、せっかくロッテまで来たのだから…と、まずは日本人旅行者なら必ず参拝するロッテ免税店へ行く(ヨン様が「ロッテで会いましょう」と言っていたので)。やはり、日本人だらけである。私は特に買う物はなかったのだが、とりあえずグルッと回ってみたが、どうも様子がおかしい…。ブランドものばかりが増えて、いわゆる土産品コーナーが縮小されてしまっていたのである。が、せっかくグルグル回ったのだから…と、岩のりを1箱購入した。VISAカードで支払いしたので5%OFF! 11ドルが10ドルになった。さて、レストラン街に行くと、これまた様子がおかしい。最近のソウルは、ちょっと見ないうちに店が変わってしまうのである。昔、「ソウルで一番!」を誇っていたCDショップが鐘路にあったが、孔章源さんの説明によると「CD業界そのものが不況で、あの店も潰れてしまいました」とのこと。私が入ろうとしていた店も、どうやらなくなってしまったようである。

ロッテ百貨店内のレストランは、総じて値段が高めである。高い金を払ってまでロッテで食事をする必要はなくなったので、「田舎のご膳」という名の店に行くことにした。この店は、「いぢくり回した肉」で有名な、あの店である。そして、この店の看板メニューである田舎御膳は、5000ウォン(500円程度)でご飯とみそ汁、小皿料理が15品ほど付くという、素晴らしくお得で満腹になるセットメニューである。これとビールを頼んで、旅の締めくくりとした。

が、ホテルに戻って、タクシー運転手の金さんに電話を入れると、「明日、私は行けなくなりました。お得意様を乗せなくてはならないので、私の代わりに友達のタクシー運転手が行きます」とのことだった。何だか切なくなる。

たしかに、私はお得意様ではないよなぁ…。盛り上がっていた気分に水を差されたような感じがするが、楽しくなければ旅じゃない! 韓国へは体も心もリフレッシュしに来たような部分もあったじゃないか! そうそう、別のタクシー運転手の運転も楽しめるってもんだ!