ソウルの動く城!?



昨夜のサイト更新は、いつもよりも早めに出来た。これで睡眠時間が確保できる…と思いきや、Tooniversで「あたしンち」(韓国題: アッタマンマ―アタフタ母さん?)が夜中の1時過ぎに始まってしまったのである! これを見たいがために、アニメチャンネルをずっとつけっぱなしにしておいたようなものである。見ずにはいられない! しかし、睡魔も激しく襲ってきた。そこで、テレビをスリープモードにし、フトンに入って、とりあえず意識がある間は見ることに決めた。多分、1時間は見たのではないだろうか。しかし、やはり、いつの間にか意識が無くなっていた…。

そんなことばかりしているものだから、やはり朝がツライ…というよりも、何の衝撃もなければ一日中ずっと眠り続けてしまうのではないか…というくらいである。それで、今朝も目覚めたのが11時半。今日のメインイベントは、久々にノンバーバル・パフォーマンス(言語を使わないパフォーマンス)「NANTA」を夜から観に行くことくらいである。それまでは何の用事もなかったので、13時過ぎにホテルを出て、とりあえず郵便局でエアメールを送ることにした。

ホテルから歩いて数分の所にソウル中央郵便局がある。ここから郵便を送ろうと思った瞬間、大変なことを思い出した。今、ソウル中央郵便局は改装工事中で、移転しているのである! その移転先がわからない…。とりあえず、工事中の場所に移転場所の地図くらいあるだろう…ということで、工事現場に行ってみた。たしかに、移転場所を記した地図はあった。しかし、簡素化しすぎていて良くわからない。地図に示された道がどこを指すのか、良くわからないのである。とりあえず、見当をつけて歩いてみた。しかし、それらしきものは見つからない。屋台のお兄さんに聞いたが、ちょっと説明が違う。おでん屋のオバサンにも聞いてみたが、曖昧すぎて良くわからない。仕方なく、派出所に入って聞くことにした。だらけた警官が2人、くつろいでいた。「失礼します。道をお尋ねしますが…」と声をかけると、驚いたように警官2人が飛び上がった。そして、郵便局の場所を聞いた。それにしても、「郵便局」という韓国語は、何度発音しても言いにくい。郵便局は韓国語では「郵逓局」と書いて「ウチェグ」と発音する。かつて日本で郵便局を「逓信局」と言ったのと同じで、「逓」の字を使用するのである。それで、何度もウチェグを言い直しては、道を尋ねた次第である。警官は、道を教えるために派出所の外に出てくれた。道の説明の前に「日本人?」と聞いてきた。「そうです」と答えたので、日本人用に日本語か英語を交えて説明してくれるのかと思いきや、オール韓国語! 「郵便局、移転したんですよ」という説明から始まり(そんなこと、知ってるわい! それで迷ってるんじゃないか!?)、身振りを交えての説明。やはり、警官の説明がいちばん良くわかった。

警官の説明通りに歩いていくこと10分。途中で明洞聖堂を横に見て、何となく心が穏やかになったような気分になったところで私の目に飛び込んできた光景は…。たしかに、あれはソウル中央郵便局だ! しかし、シャッターが閉まっている!…というものであった。やっぱり、日曜日はお休みかぁ…。ここまで、ロスタイムがトータルで20分。ただでさえ寒いのに、20分もフラフラ歩き回っているのは…。

そういえば、お昼ご飯を食べていなかった…ということに気づき、どこか気の利いた店を探そうとするも、ロスタイムがもったいなく思えてきて、なかなか良い店が見つけられない。明洞キルに出たところで、良い匂いが…。おでんの屋台である! 久々に韓国おでんでもいいなぁ…ということで、屋台で2串食す。1串500ウォン(50円程度)なので、100円程度で昼食が済んだことになる。こういう経済的な昼食も良いかも。

ただ、韓国のおでんは、日本のものとは違い、具がたくさんあるわけではない。たいてい、魚の練り物系が1〜2種類である。または、同じネタを2種類のスープで味を変えて出しているような、そんなものもある。今日の屋台は、後者のほうである。どちらにせよ、スープは辛め。そして、台の上にあるタレをつけながら食す。大阪の串カツだと「二度づけ禁止」というところだが、韓国では何度つけ直しても文句を言われることはない。途中で、紙コップにおでんのスープを入れてくれるので、それを飲みながらおでんを食す。これも美味なり! ただし、辛めの味付けなので、辛いものが苦手な人は、かなりの注意を要する。

さて、経済的な昼食の後、足はアバターに向いていた。正面玄関横には映画館(8階)の切符売り場があり、ここの映画館の1つで「ハウルの動く城」も上映されている。この時点で時計は13:45を指していた。次回のハウルの上映時間は13:50。そして「残り1席」とある。急いで窓口へ進み、「ハウル、1枚!」と叫ぶ! 窓口のお姉さんが何やら聞いてくるのだが、マイクのスイッチが入っていないのと、周りがうるさいので聞こえない。お姉さん、「何時のですか?」と聞いているらしい。時間が迫ってきているので焦る私…。「次のです!」と叫ぶと、「1時50分の1枚で良いですか?」との確認。「そうです!」と私。発券時、座席の説明をしてくれようとしたのだが、私の心が窓口よりも時計に移っていることを察知してくれたお姉さん、キップを私に渡しつつ、「ここに書いてある通りです」とだけ教えてくれた。映画館の場所までエレベータで行けばよいのだが、エレベータを待つ時間がない! エスカレーターで8階まで進み、上映開始2分前に滑り込んだ!

以前、日本大使館公報文化院で上映された「東京流れ者」(渡哲也主演、1966年作品)を見た時、「日本人ならここで泣ける!」という場面で大爆笑が起き、ビックリしたことがある。今回はどうなるのだろう? 趣味と実益を兼ねて、ハウルを鑑賞することにした。日本の映画…それもまだ日本で公開中の映画を、ソウルで観ることになるとは…ジブリの威力のすごさを物語る。おまけに、映画館は満員御礼!(韓国語サイトはこちらを参照)

さて、上映が始まると、すぐにハウルとソフィーの声優名が韓国語で表示された。ハウルは木村拓哉、ソフィーは倍賞千恵子…。すると、私の隣に座っていた韓国人の男の子が「キムタク…」とつぶやいた。日本大衆文化の開放によって、木村拓哉がキムタクであることまで広く知られているようである。もっとも、SMAPは日本大衆化開放前から韓国でも有名だったが…。

しばらく観客はそのストーリーに惹き付けられていった。特に笑える場面でもないところで爆笑が起きるという、私の予想を裏切らない韓国人の反応を楽しみつつ、私はやがて研究者であることを忘れてスクリーンを見つめていた。ネタバレは避けたいのでストーリーは紹介しないが、ラストに近づき、私の涙腺がゆるみかけたその瞬間、

ウワッハッハッハッハッハッ…(以下略)

という大爆笑! 映画館が動いてしまうような、爆笑の洪水! たしかに、「水曜どうでしょう」の大泉洋の声が聞こえてきて、私も「あらっ!?」とは思ったけれど、韓国人が「水どう」を知っているはずはない。ついでにいえば、大泉洋の所属するTEAM−NACKSの面々も、堂々と(?)声優としてエンドロールに名前が乗っていたではないか?!

複雑な心境…いや、むしろ呆然としながら、エンドロールを見ていると、韓国人客はどんどん退出していった。日本語だけの表示なので、見ていてもつまらないのだろう。私は意地になって、エンドロールが終わって館内にライトが灯るまで、とりあえず座っていた。映画館のスタッフは、私が最後まで席を立たないのを、不思議そうに何度も何度も首を傾けながら見ていた。

15:53、上映終了。これで7000ウォン(700円程度)なのだから、日本で見るよりもかなり安い!

韓国語のテロップを見ていたら、私が講義で紹介した「日本的以心伝心」に近いものを彷彿とさせるようなものを、何度も見つけた。ソフィーが景色を眺めて「あぁ〜っ!」と感嘆の声を上げるシーンがあるが、日本語のセリフは「あぁ〜っ!」だけなのに、韓国語では「あぁ、きれい!」となっている。日本人なら、「あぁ〜っ!」で全てを察するのだが、韓国語テロップでは、「ソフィーは景色を見て “きれい” と思って声を出したんですよ」というような説明的な翻訳である。他所にも、そのような翻訳がいくつかあった。ただ、私の韓国語能力の関係で、すべてを把握しきったワケではないのだが…。

ハウルを見た後、ハウルのチラシ(リーフレット)を大量にバッグに詰め込んだ。そして、逃げた。

アバターを出た私は、そのまま徒歩で鐘閣に出て、韓国観光公社を初めて訪ねた。東京・有楽町にある東京支社は何度も行ったことがあるのだが、韓国では初めてなのである。特に観光案内を必要としないからなのだが、今回はちょっとした目的があって韓国観光公社を訪ねることにしたのである。昨年9月、韓国観光公社内に「韓流コーナー」というスペースがオープンしたのである。テレビのニュースやウェブサイトでした見たことがないので、どんなコーナーなのか一目見ようと思っていたわけである。

韓国観光公社にて
韓国観光公社にて
イ・ビョンホンとクォン・サンウに囲まれて?
鐘閣周辺の寂しい道路

私が韓流コーナーに到着した時、日本から来ていたオバサン5人組がすでにコーナー内で写真をパシャパシャ撮っていた。「今度は私、ソン・スンホンさんと撮りたいわぁ!」「じゃあ私、今度はイ・ビョンホンさん!」などという会話を聞くにつれ、「ダンナはどうした?」と思う私…。そして、そんな会話に耐えきれなくなった私は、オバサンたちに向かってツカツカと歩き、そして一言…「シャッター、押してもらえますか?」と懇願。等身大パネルにはヨン様のものはなかった。どうやら、私が来るのを察知して、コソコソ逃げ出したらしい(ウソ)。もともと、ヨン様のパネルはないのである。イ・ビョンホンとクォン・サンウのパネルの間に立ち、撮影をお願いしていると、一人のオバサンが「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」と声を出し続けている。「イヤなオバサンだなぁ…」と思っていると、「パネル! パネル! 倒れる!」と…。イ・ビョンホンのパネルのバランスが悪く、さらに私の体の一部が触れたらしく、今まさにイ・ビョンホンは卒倒しそうな勢いであった。慌ててイ・ビョンホンを助け起こし、再び撮影に戻る。大晦日は紅白歌合戦に(ヨン様の代わりとして)出演して、よっぽど疲れていたのだろう。

その後、昨日に引き続いて永豊文庫を訪ねてみた。昨日の店員の説明によると、今日にもケーブルTVガイドが出荷されるということだったのだが、今日は日曜日ということもあり、先月号が1冊残っていただけであった。そして、マンが本を2冊追加購入。また、荷物が増えた…。

それにしても、ソウルの日曜日というのは、人間は多いが車が少ない。昨日までのあの渋滞が、ウソのようである。が、この時点で気温が0度を超えたようで、やっと暖かさを取り戻したような感じがした。

荷物が重くなったので、一度ホテルに戻ることにした。「NANTA」までにはまだ時間があるだろう…と思い、ホテル近くの明洞トンカツで早めの夕食をとることにした。この店は、結構名の通った店である。以前はトンカツ専門店であったが、今ではラーメンも出す。看板には「日本の味」と日本語で書かれている。よっぽど自信があるのだろう…と、以前から気にはなっていたのだが、なかなか入店の機会がなかった。それで今日、味を確かめに入店した。トンカツなどの揚げ物には目もくれず、ラーメンのメニューだけを目で追う。そして、カルビラーメンなるものを注文した。どんなラーメンが出てくるのかワクワクしながら待っていると、私の目の前には真っ赤なスープのラーメンが運ばれてきた。麺は、日本のものと殆ど同じものが入っている。どうやら、この点では日本の味は再現されている。韓国では珍しいことである。カルビをチャーシューのようにあしらっているあたりは、アイデア物として評価できる。が、スープはどうだろう? 見るからに辛そうである。レンゲで一口すくってみる。そして少々むせる。やはり…スープは韓国風とお見受けする。が、どこか舌がこの味を覚えているような…。担々麺とも違うし、かといって醤油ラーメンにラー油を垂らしたような味でもない。しかし、「日本の味」ではないように思う。店員の誰かが日本に行って、その目と舌で味を覚えて帰ったのだとすれば、「ちょっと、どこ見てんのよ」という感じである。

17:45にホテルに戻り、「NANTA」の予約確認メールをみて愕然とする。本日の公演開始は18時! 今から急いでも間に合わない! おまけに、メールには英語で「開演30分前には来てください」と書かれていた。昨日のうちか、あるいは今日の昼間にでも、プリントアウトした確認メールを見ておけば良かったのである。新年早々、大ポカをしてしまった。2005年もこんな具合なのだろうか?

気を取り直して、タクシー運転手の金光哲(キム・グワンチョル)さんに連絡する。実は今日、今井医院の今井先生も韓国入りするのである。それで、金さんに連絡を取り、今井先生の予定を伺おうと思ったのである。最初の電話では、まだ金さんが今井先生と合流していないとのことだったが、次の電話ではすでに今井先生が金さんのタクシーに乗り込んでいて、連絡を取ることが出来た。しかし、今井先生には今井先生のご都合もあるだろうし…ということで、新年のあいさつだけで電話を終えた。

こうして、何だか良くわからないまま、今日という日は過ぎていった。