景福宮で見つけた新年の(かすかな)期待



セヘ ポンマニ パドュセヨ! あけましておめでとうございます。


除夜の鐘をテレビで見ながら、2005年のカウントダウンをし、このサイトの更新のために3時半まで起きていた私…。ここ数日、サイト更新に時間がかかり、いつも就寝が3時半…。せっかく汗蒸幕で疲れを癒したというのに、今朝も起きるのがツラかった。当たり前である。

が、新年早々 “寝坊” など許されるはずがない! 9時に起床し、身仕度を調え、ホテル地下1階のGoody Goodyで新年最初の朝食を取る。いつもの私なら、「朝食は街中で、それも安く…」というところだが、せっかくの正月(日本での場合…韓国は旧正月を祝うので、今日はただの祝日)なので、ちょっとくらい高くても、ちゃんとご馳走を食べようと昨日から決めていた。朝食メニューは「アメリカ式」「コンチネンタル式」「日本式」「韓国式」などがあるのだが、私は当然「韓国式」のオーダー。一応、おめでたい日であることから「アワビのお粥」(チョンボクチュク)を食す。新年を迎え、気持ちも新たな私の体にジワジワと染みこむ粥の味…なかなか美味であった。

粥を食し、めでたい気分を堪能しようとしていた私ではあったが、隣のテーブルで食事をしていた関西系グループ(オジサン1名、オバサン3名)の声がうるさくて、気分に浸れず。話の内容は、「何も韓国に来てまで話すことではないんじゃないか?」と思えるような身内への愚痴、そしてツアーでマッサージを頼んだの頼まなかったの…というもめごと。「あのねぇ、今日は新年最初の日なんだから、ここに来てまでそんな話、する必要ないでしょ?」という心の叫びを抑えつつ、平静を装った。特にオジサン、声がデカイ! 話の主人公(ミヨちゃんという女性らしい。おそらく、これはグループの誰かの家の嫁さんである)を責めるだけ責めた後、別の人がミヨちゃんを責めようとすると、「それは言っちゃあいけないよ!」などと、自分で話に火をつけておきながら、その火を消そうとする。ただ、そのオジサンは韓国語が出来るようで、店員さんとの会話は韓国語で行っていた。そして、自分の食事が終わると、「ちょっと私、先に戻ってますんで…」と、さっさとレストランをあとにしてしまった。残されたオバサンたちは、オジサンへの攻撃を始める。この攻撃こそ、マッサージを頼んだの頼まなかったの…という話である。

そりゃあ、ねえ、私も確認しなかったのは悪かったと思うんよ。でも、確かに私はバスの中で「マッサージ、お願いします」って言ったように思うんだけれど、確かじゃないんよ。でもね、確かじゃないなら、確認してくれてもいいもんよ。あの人は、自分のペースでツアーを進めようとするから、こういう問題が起きるんよ!

【問題】上記の文章は、オバサンの話をほぼ忠実に再現したものである。この中から、矛盾点を指摘せよ!

こんな問題を作成できるほど、オバサンの言い分はハチャメチャであった。「自分のペース」でツアーを進めようとしているのは、おそらくおばさんたちで、オジサンはそれを必死にコーディネートしているんだろうなぁ…。だから、オバサンたちと一緒にいるのに疲れて、先に戻ってしまったものと思われる。

が、これは、海外でよく見る日本人像そのものである。今回の渡韓で改めて気付いたことがある。日本人観光客の特徴を。以下のように挙げてみた。

(1)は、ハッキリ言って「やめてほしい」の一言に尽きる。ガイドブックを見るなら、どこか人目につかない場所か、コーヒーショップなどの店内でにしてほしいものである。(4)なども不思議な現象である。(5)については、韓国の場合は弁護の余地がある。韓国の路線バスは、ハングルでしか表記されていないので、ハングルを覚えたての人には、バス停にいるバスの行き先と経由地を目で追っても追い切れず、バスが発車してしまうような状態になる。また、バスの経由地は往々にして「上りのみ」「下りのみ」という所があり、慣れているソウルっ子でさえも間違える。

韓国語を多少でも勉強してから韓国に出掛けようとする日本人の割合は、(今までの私の経験上)極めて少ない。日本語で何もかもが事足りると信じているものだから、街中で困ることになる。食事をする場所、買い物をする場所は、日本語のメニューがなければ困るので、そういう困った日本人目当ての店が繁盛する。そういう店は、ガイドブックによく載っているので、日本人はハングルの洪水の中でオアシスを見つけたような気になるが、私からしてみれば「蜃気楼」みたいなものである。

さて、私の「ぼやき」はこのくらいにして、その後の私の行動を記そう。食後、部屋に戻ってメールのチェックをしたり色々な準備をして、11時半過ぎにホテルを出た。この時の気温が、たしかマイナス8度だったような…。昨日が「冷蔵庫の中にいたような日」であるとするならば、今日はさながら「冷凍庫にいるような日」に思えた。明洞駅から地下鉄4号線に乗り、東大門運動場で5号線に乗り換えて光化門へ向かう。ここは教保文庫の最寄り駅である。が、今日は休みなので寄らず(というより、今日は寄る予定がない)、世宗路(セジョンノ)を北上して景福宮(キョンボックン)を目指した。やけに警察が多いので気になったが、その理由がすぐに判明! アメリカ大使館の前だったのである! もう、多くを語る必要はあるまい。さらに歩いていると、やけに派手派手な建物が目に入ってきた。近くにいる警察官に建物について質問しようと思ったが、必要なかった。案内版には「文化観光部」とある。要するに、日本大衆文化開放のレベルを設定していた機関である。「文化観光部」とあるが、ここの長は「文化観光部長官」となる。「部」は、日本で言う「庁」のようなものだろうか、いずれにせよ、国家機関である。世宗路の突き当たりには、美しい光化門がある。これが景福宮の入口である。この門ごしに見る景福宮の美しさを妨害しようと、大日本帝国は門と宮の間に朝鮮総督府を建設し、景色を遮り、通行を遮った。それが朝鮮民衆に大きな精神的なダメージを与えたのである。その建物は、今から8年くらい前までは「国立博物館」として利用されていたが、昔の(あるべき)景観に戻そうということで、現在は取り壊されて、植民地支配以前と同じ景観が取り戻された。この門をくぐるたび、「韓国が日本に何度も謝罪を求めるのは、当然といえば当然だ」と思える。

3000ウォンを払って景福宮に入ると、まずは勤政門(クムジョンムン)が目の前に現れる。その門ごしに勤政殿(クムジョンジョン)が見える。なつかしい、いつもの光景である。そして例によって「慶」のつく殿(てん)を巡ったが、今まで知らなかった殿が存在していた! その名も

慶成殿(キョンソンジョン)

である。いや、今まで知らなかったわけではない! 名前が今までと違うのである! 歴史的建造物の名前が変わってしまって良いのだろうか? いずれにせよ、「慶亘になるための殿」という “こじつけ” で、大いに喜び、ここでかなり写真を撮りまくる。自分を入れて写真を撮りたかったのだが、そこは一人旅のつらいところ…。セルフタイマーで撮影するも、やたらと構図で失敗する。頭が入っていなかったり、人物にピントが合わなかったり、やけに偏りのある写真になってしまったり…と、試行錯誤をくり返し、カメラの位置を何度も変えて…と、試行に試行を繰り返す。そうなると、周りが見えなくなる。そして、頭を建物にしたたかぶつけた! が、ちょうど帽子をかぶっていたので、ダメージは少なかった。そう、防止に手袋無しには、こんなことをやっていられないのである! そのくらい寒かった! が、そうやってダメージを慶成殿の前で回避したあたり、今年は良いことがありそうだ…と、ささやかながら、期待してしまう私であった。

文化観光部の案内板と光化門アメリカ大使館前は警備が厳重
文化観光部

景福宮の勤政門にて景福宮の慶成殿にて
慶成殿! まさに私のために建てられたような、そんな名前です!

宮殿参りで「初詣」を果たした私は、小腹がすいてきたので食事をするための移動を開始した。地下鉄駅まで(景福宮駅か光化門駅)歩くのもツライので、路線バスで南大門市場に出た。ここに、昨年の元旦に「マンドゥク」を食した食堂がある。あのマンドゥクは美味だった。で、その店を目指した。日本語表示もあり、店員さんも片言の日本語を話す店ではあるが、お客の大半は韓国人。だから、韓国人料金になっている。ましてや、日本人が一人で入るということは、おそらく想定外なのだろう。入店して、迷うことなく「トンマンドゥク チュセヨ!」(トック入りの饅頭スープ、ください)と注文する。4000ウォンと安めの価格ではあるが、量はかなりある。これ1杯で十分に満腹になる。

食後、再び路線バスに乗り込み、鐘路へ。ここで永豊文庫(ヨンプンムンゴ)に入る。ここは、1月1日も営業しているので、助かる。インフォメーションで「ケーブルTVガイド、どこにありますか?」と聞くと、「TVガイド…う〜ん、B1(地下1階ではなく、コーナー名)の雑誌コーナーに行ってみてください」と言われる。とりあえず礼を述べてB1へ移動する途中、大規模なマンガ売り場に遭遇する。とりあえず、予定変更。「クレヨンしんちゃん」を2冊と「ジャングルはいつもハレのちグゥ」を2冊、「あたしンち」を2冊購入。そして、雑誌売り場の店員さんに同じ質問をしたら、1冊だけあったTVガイドを捜してくれた。しかし、それは12月号…。1月号はいつ出るのか聞くと、明日以降だとのこと。また出向かなきゃ!? 永豊文庫の地下に行き、VCDを数枚とCDを購入する。殆どが研究・教育用に購入したものであるが、こうやって帰国の荷物が増えていくんだなぁ…と、自分でも呆れるばかりである。

テレビでPV(プロモーション・ビデオ)を見ていたら、「あっ、この曲は良い!」と思うものを数曲見つけた。すぐにアーティスト名と曲名をメモし、記憶し、CDショップで探す…。今まで、探したCDは100%見つけた! おまけに、サービスだか何だか知らないが、パッケージがかなり大きいものも多い。あぁ、荷物がどんどん重くなる…。

ホテルに戻って、メールのチェック。新年の挨拶メールが来てる来てる…。

テレビをつけると、今日はToonivers(アニメ専門のチャンネル)では「犬夜叉」スペシャルの続きなのか、やたらと犬夜叉を見る。そして、依然人気の高い「クレヨンしんちゃん」…と、日本ではあまりアニメを見ない私であるが、韓国では「研究」のために暇さえあればアニメ、アニメ…アニメ!

19時過ぎ、夕飯を食べにホテルを出る。今夜は何をしよう?…と考えながら歩くのは危ないので、とりあえず足りなくなったものを買いに行く方向で店を決めることにした。足りないもの…それは、シャツである! シャツといってもアンダーウェアのほうではなく、カッターシャツのような類である。…となれば、GIORDANOと相場は決まっている。12月30日に入店して、再び今日、入店。先日、私の力になってくれた店員さんやレジ担当の店員さんは私のことを覚えていてくれていた。嬉しい限りである。

結局、方向的に夕食は忠武(チュンム)キムパプで食すことになった。ここのキムパプには、ものすごい特徴がある。それは…中身がない!…ということである。海苔で巻かれているのは、ただのごはん。ごはんに味付けはない。これが1口大になっているものが10個と、大根のキムチ、イカの辛子味噌あえとスープがセットになり、4500ウォン。昨年までは4000ウォンだったので、500ウォンの値上げにビックリ! でも、地下鉄の初乗りが700ウォンから900ウォンになるご時世…仕方がない。そして、味のほうは、以前と変わらないおいしさ! 大根のキムチは程よい辛さで、イカのほうは激辛に近い。そこで、爆発しそうになった口に、何の味もない(?)キムパプを放り込む。これがまた絶妙! この組み合わせであるがゆえに栄えるキムパプである。キムチもイカもスープもお代わり自由なのだが、今日はとりあえずやめておく。

ホテルで、「朝鮮日報」と「文化日報」を読む(自分で購入)。今年が日韓国交正常化40年となるため、日韓関係の特集が組まれている。相変わらず「過去史」という言葉が紙面を踊る。加えて「歪曲」という表現も…。

こうやって、私の新年初日が過ぎていった。本日のこだわり…韓国料理しか食べない! 和食は、帰国するまで食さない(ただし、韓国風にアレンジされたものを除く)。さて、どこまで続くのやら…。