昨夜は、どういうワケか寝つけなかった。1年ぶりの韓国行きに興奮していたのか、はたまた「5時半には起きなくてはならない!」ということで気分が高ぶったのか…? ベッドには入ったけれど、2時間も寝ないうちに起床時間になってしまった。
5時半に、けたたましく携帯電話のアラームが鳴り、モーニングコールがかかり、起床。顔を洗い、身仕度を調え、フロントへ向かう。チェックアウトしたのが6時、空港への無料バスがホテルを出発するのが6時半であるから、かなり余裕を持ってチェックアウトしたことになる。6:25にバスがホテル前に到着。このバスは、ワシントンホテルを出発すると成田ビューホテルを経由し、それから成田空港へ向かうことになっていたが、ワシントンホテルから乗り込んだ客で座席も荷物もいっぱいになってしまった。結局、ビューホテルでは殆ど新しい客をピックアップできず。これだけでも、宿泊ホテルの選択が間違いではなかったことを物語るのに十分であった。
テロ対策のため、空港の警備がかなり厳重になっていた。以前、成田空港の建設反対派のテロが沈静しない頃、空港へ向かうバスの乗客すべてのパスポートをチェックしていた時期があった。それも、いちいち乗客を全員降ろして、荷物検査まで…。そんな時代を思い出した。今回は客を外に降ろすようなことはなかったが、ほぼ全員のパスポートチェックは行われた。「日本にいるからといって、テロの驚異から逃れられるわけではない」ということを思い知らされる。
6:50、バスは成田空港第2ターミナルへ到着。吐く息が白い…気温、4.8度! 携帯電話でソウルの気象情報を調べてみた。すると、「最高気温:−1度、最低気温:−12度」と表示されていた!? 最高でも0度未満…。どうやら、昨年よりも気象条件が厳しいらしい。しかし、防寒対策は(とりあえず)バッチリである! 寒さなど、恐れるに足らず!アシアナ航空のチェックインカウンターへ急いで向かうと、「9:25発のOZ107のチェックインは7:25より」という内容の掲示が…。そして、いくつかのスーツケースが置いてある。どうやら、チェックインの順番取りをしているようである。私もスーツケースを置き、チェックインカウンターの開くのを待った。さて、チェックインが始まったら、なぜか職員が私に団体用のカウンターでチェックインしても良いと促し、ほとんど待ち時間なく私の順番が回ってきた。そして、スーツケースの重さを調べてみると、この時点で17.8kg! スーツケースのもとの重さが6.8kgらしいので、衣類だけですでに11kgも詰め込んでしまったことになる。韓国内で色々な買い物をするので、帰国時は荷物が増えること必至である。が、今はそんなことを考えていても仕方がない。無事に韓国入りし、目的を完遂することこそ、今考えるべきことである! それに、1年ぶりの韓国…楽しまなければ!
チェックインを終え、郵便局とJCBプラザで用事を済ませようと思ったが、どうやらどちらも8時にならないと開かないらしい。そこで、郵便局は断念し。JCBのほうはソウルで手続きをすることにして、早々に出国審査に向かうことにした。いっぺんに大勢が出国審査に並んで、飛行機の搭乗ゲートに間に合わなかったら…と思い、余裕を持って移動したのだが、人があまり多くなく、冬休みという感じがしない。テロの影響か、津波の影響か、とにかく人は少ないのである。手荷物検査から出国審査を通過するまでに、10分とかからなかったぐらいである。
今回利用するアシアナ航空(OZ)107便は、本館からシャトルに乗って移動したD91からの出発であった。私がゲートに到着した時には、地上職員1名がコンピュータと向き合って、色々な作業の確認をしていただけで、搭乗予定者は私を含めて5〜6名足らずであった。すでにゲートにはOZ107便の使用機材が停まっていた。よく見ると、エアバス321…。通常、韓国内の国内線やかなりの近距離路線で使用されることの多い機材である。国際線仕様であれば、170席程度の規模である。アシアナ航空の東京−ソウル線では、ボーイング767が投入されることが多く、これだと300席程度のコンフィギュレーションとなる。ついでに言えば、日本航空や大韓航空の場合、この路線はドル箱なので、ボーイング747(ジャンボジェット)を投入し、一気に450名程度を運んでしまうのである。どうりで、航空券の予約が入れにくかったはずである。こんな小さな機材を使っている便であれば、すぐ予約でいっぱいになるのは当然である。しかし、嫌いな機材ではない。性能は、結構良かったりするのである。離着陸の際のストレスも少なく、乗り心地は良い。ただし、狭いのである! エコノミークラスであれば、左右に3列ずつ(3−3)…というコンフィギュレーション(ジャンボの場合、3−4−3のコンフィギュレーションとなる)。加えて、ジャンボの最後尾は64列目くらいになるが、エアバス321は40列以内で最後尾となる。私は37Aという座席だったが、これが最後尾の1列前。客室乗務員用のジャンプシートが少ないため、最後列は乗務員用に空けられているので、実質最後列扱いだ!
搭乗券には搭乗開始が8:55と書かれていたが、その通りに搭乗が始まった。アシアナ航空のスゴイところは、予定をキチンと守ろうとする姿勢である。これは、何度利用しても好感が持てる。そして、出発時間ちょうどの9:25にタキシングが始まり、その5分後に私は地上を離れ、雲上人になった…って、「雲上人」の使い方が違うじゃないか!?機体が水平飛行となった10時過ぎ、ミールサービス(いわゆる機内食)が始まった。アシアナ航空の機内食は、韓国テイストを嫌味にならない程度に感じられるので好きだ。今回、ミールサービスがあることを知らなかったので、ちょっと感激した。エコノミークラスはチョイスはないようで、次から次へとミールが配られる。アルミのフタがしてある容器があったので手で触れてみたら、これがかなり熱かった! 写真でお分かりになるだろうか? 韓国風の焼肉丼に茶そば、パンにオレンジジュースにフルーツがトレイにのせられているのである。焼肉丼には、ししとうとチンゲンサイの炒め物、にんじん、糸こんにゃくの炒め物も添えられていて、これはこれでボリュームがある。乗務員がドリンクサービスをしているのが見えた。その時、どうも私には懐かしく、そして見覚えのある色の缶が目に入ってきた。「お客様、お飲み物は?」と聞いてこられたので、「7UP、イッスムニカ?」(7UP、ありますか?)と尋ねた私に、目で微笑みながら乗務員は7UPを注いでくれたのであった。日本国内ではあまり見かけなくなった7UPであるが、ユナイテッド航空に乗るたびにこの7UPを楽しみにしていた。いや、7UPを飲むためにユナイテッド航空を利用してきたとも言える。が、同じスターアライアンス・メンバーのアシアナ航空にも7UPが積まれているのであれば…。韓国へ行く楽しみが、また1つ増えた。私にしかわからない、ささやかな喜びである。
わたしは窓側に座っていたが、隣の2人は親子(母と息子)のようで、母親のほうは韓国が初めてらしい。息子はガイドブックを読みながら、「韓国語って、日本語と似ているものが多いんだよ。“韓国” って韓国語で何て言うか知ってる? “ハングク” っていうんだよ」と息子。すると母親は「えっ? ハングル? 知らん! 紛らわしい」と一蹴。そして、「仁川って、ソウル? 市内へはタクシーで出ようか? でも、日本語の通じない運転手さんだったらイヤよ! 日本語の話せない運転手のタクシーなんて、最低!」などとほざき始めた。どうやらこの母親、「冬ソナ」あたりで韓国に興味を持ち始めたらしい。そういえば、私の乗り込んだOZ107便には、女性のほうが多かったような…。さて、そうこうしているうちに、仁川(インチョン)国際空港に到着。成田を離陸した際、貴重のアナウンスからは「現地到着、11:48を予定」とのことだったが、12分ほど遅れて正午に着陸。が、タイムテーブル上、この飛行機の到着時間は12:05であるから、これは予定通りの部類にはいるのだろう。減速した機体がゲートに到着したのが12:10。私は最後尾に座っていたため、なかなか降機することが出来ず。やっとの思いで入国審査場に着いたのが12時半。長い列が出来ていた。どうやら、日本からソウルに到着したのは、アシアナ航空だけではなかったらしい。大韓航空に日本航空、そして福岡や関西からの便が続々、ソウルに到着していたのである。ここでイライラしても始まらないし、旅は楽しくなくてはならないから…と、ゆっくり待つことにした。サービス精神(?)で、機内で作成した入国申告書は、ハングルで書いても差し支えない部分はすべてハングルで書いておいた。私の番が回ってきて、入国審査官に「アンニョンハセヨ?」とあいさつ。通常、ここで無視されるのだが、今日は違った。どうやら、私のハングル作戦が功を奏していたらしく、係官はあいさつを返してきたのである。そして、「あっ、ハングルで書いてありますね。上手ですね」などと褒めてくれた。入国審査場でニコニコ笑っていた私…。周りの人も、「何でアイツ、笑ってるんだ?」と思ったに相違ない。
荷物をピックアップすると、あとは課税対象品を持っていないので、すべての手続きが終了したことになる。金光哲(キム・グワンチョル)さんに空港を出たことを電話で連絡する。金さんと合流する前、細かいお金を作るために、空港内のミニストップへ入り、リップクリームを購入した。3600ウォン也。空港の空気はエアコンのおかげで暖かいのだが、一歩外に出た瞬間、息が凍りそうな思いがする。昼の仁川、気温はマイナス2度。今日の最高気温らしい。だから、リップクリームは必需品となる。が、やっと韓国に到着したという安心感からか、ボ〜ッとしていた私は、とんでもない失敗をしてしまうことになる。買い物を済ませ、他の客の邪魔にならないように荷物を空港ロビーに移動させ、おつりをサイフにしまっていたら、日本人の母娘が私に近づいてきた。その右手にはリップクリーム…。「あのぉ、これ、お買いになりました?」と。恥ずかしい限りである。丁寧にお礼を言い、逃げるようにその場を去った。
模範タクシー乗り場で金さんと合流するまでが、また一苦労。とにかくタクシーの客引きがスゴイのである。もう毎度のことで慣れてしまった部分もあるが、それでも私が日本人だとわかると「ドコマデ行キマスカ?」とか「タクシー、イカガデスカ?」などと何人もの運転手が声をかけてくる。そのたびに「友人と約束があるから」とか「友人を待つから」などと言い放ちながら、金さんとの待ち合わせ場所に急ぐのだった。初めて韓国に一人で降り立った時は、その客引きがちょっと恐怖のようにも思えてしまったが、今では韓国語の良い練習場である。そして、12:50に金さんと無事に合流! 金さんが大きな声で私を呼んでくれていた! 約1年ぶりの再会。固い握手で再会を喜び合った。
韓国の道路は、1つの絶叫系マシーンの如くである。路線バスはジェットコースターのようだし、タクシーや乗用車、そしてトラックは割り込みのオンパレード。いつ衝突してもおかしくないような状態なので、道路のあちこちからクラクションが聞こえる。金さんのタクシーも、韓国人らしい運転である。私は金さんに絶対的な信頼を置いているからコワイと思ったことはないが、周囲の車のムチャクチャな割り込みをヒラリとかわせるあたりが韓国人らしいのである。
空港から1時間でサボイホテルに到着。チェックインの際、「実は、お客様(=私)の部屋のカギに問題がありまして、今すぐにお渡しできないんですね。それで、3時になったらお渡しできると思います」と言われる。数年前からカードキーを採用するようになったので、それに伴うトラブルだろう。カギを必要とする緊急性はないので、別に困ることもなかったが…。
部屋に着いて、テレビをつける。いきなり「クレヨンしんちゃん」である。アニメ関連のケーブルテレビ2局で、それも同時間にクレしん…。オバケのような人気ぶりに、改めて敬服する。
趙一雨(チョー・イル)くんに連絡を入れた。彼との会話はオール韓国語である。私の下手っピーな韓国語にも話を合わせてくれるので助かる。趙くんとは会う約束があったものの、いつ会うのかが決まっていなかったので、電話で話し合って再会日程を決定した。そして、林秀妍(イム・スヨン)さんのオフィスにも電話をした。しかし…
「文化芸術振興院です」
「日本から来たYoshibeiですが、林秀妍さん、いらっしゃいますか?」
「今、席を外しているので、帰ってきたら電話するように伝えます。電話番号を教えてください」
「私は今、サボイホテルにいます。ここの電話番号は…」
「確認します。電話番号は…ですね?」
「そうです」
「では、伝えておきます」
「お願いします」
という会話を再び韓国語だけでするハメになった。韓国に来ているのだから、韓国語で…というのは当たり前なのだ。ここで日本語を通したら、「冬ソナ」云々のオバサマたちと同じになってしまうじゃないか?! そう自分に言い聞かせて、とりあえず買い物に出ることにした。
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