韓国の酔っぱらいに出くわした夜



昨夜は興奮して、なかなか眠れなかった。韓国行きには慣れているものの、なぜか眠れなかった。そこで、出来るだけ仕事を片づけて…と思い立ったのが間違いだった。結局、キリの良いところまで…と思えたのが朝の5時。徹夜で飛行機はツライので、少し寝ることにした。仕事で目が疲れたせいか、今度はちゃんと眠れた。そして気が付けば10時半。

起きて、韓国文化芸術振興院の林秀妍(イム・スヨン)さんに電話を入れた。4月にもらった名刺の電話番号に連絡を入れると、「林秀妍さんは別の所にいます」と言われ、正しい電話番号を教えてもらった。しかし、久々の韓国語で、なかなか聞き取れない。3回ほど繰り返してもらって、やっと意思の疎通が出来た。教えられた電話番号にかけると、今度は林さんが応答してくれた。そして、1月2日に韓日文化交流会議の李惠美(イ・ヘミ)さんと3人で昼食をとる約束をした。

昨日までに、だいたいの買い物は終わっていたのだが、まだ買い残しのお土産やトラベルグッズなどがあったため、横浜高島屋へ大きなキャリーバッグを引きながら向かった。それにしても…冬の海外旅行…それも6泊7日という長丁場(?)のため、衣類でバッグはふくらみ、重みが増しているため、なかなか購入したてのバッグをコントロールできない私…。

今日の昼食が、2003年最後の日本での食事になるため、日本らしいものを…というか横浜らしいものを食べておきたいと思った。しかし、大きなバッグがあるのでお店にはいることも出来ず、結局は崎陽軒のお赤飯弁当を買って電車で食べることになった。崎陽軒といえば横浜名物! そして、今回の渡韓が無事に、実りあるものになるように…という祈りを込めてのセレクト。

成田空港第1ターミナルにて(見よ、この荷物の多さを!)13:39、横浜駅から成田空港行きのエアポート成田(横須賀線・総武線快速直通)のグリーン車に乗り込み、弁当を食べつつ今後の計画を練った。成田空港に着いてからするべきことを、順を追って、無駄のないように…と、あれこれ思案する。15:39、成田空港駅に到着。パスポートコントロールを簡単に通過し、エレベータで第1ターミナル4階の出発ロビーへ。今回は久々にユナイテッド航空を利用するのだが、これが今回の目玉の一つとも言える! 空港では、チェックインの前に預け荷物のセキュリティチェックがある。そして、その入り口がクラスごとに異なっているのである。ファースト&ビジネスとエコノミーという具合に、入り口が2箇所ある。係員が「ユナイテッド航空をご利用ですか? 利用クラスはどちらですか?」と嬉しいことを聞いてくれた。胸を張って「ビジネスです!」と答える私。「ありがとうございます。では、荷物を…」という具合に、ウキウキ気分でセキュリティチェック終了。チェックインもほとんど並ばないで済むあたりが嬉しい。しかし、ここでとんでもないことに気が付かされた。預け荷物を計量器にのせた瞬間、「17.2kg」と表示されたのである!? エコノミークラスなら、20kgまで無料で預かってもらえるのだが、ビジネスクラスは30kgまでが無料。韓国滞在中に荷物は確実に増えるのだが、まぁあと13kg増えても平気なんだと思うことにした。それを見越して、別のバッグを1つ、忍ばせているくらいだから。

ユナイテッド航空のラウンジにて(完全に、世界に入ってますねぇ…)チェックインを終えた後、銀行で円をウォンに両替した。そして旅行保険の手続きを済ませ、JCBカードのカウンターでソウルの買い物マップをもらい、何だかよくわからないキャンペーンの参加登録をする。そして、はやる気持ちを抑えつつ出国審査を受ける。どうして心がはやるのか? ビジネスクラスとファーストクラスの利用者は、「ラウンジ」の使用が認められているのである。国内線のスーパーシート利用で「ラウンジ」を使用した経験はあるが、国際線では初めてのことだった。が、今回の航空券代は、いくらビジネスクラスであるとはいえ “タダ” なのである! 今までに貯めたマイルを、ここで一部使用したのである。いくら “タダ” でビジネスクラスを利用するとはいえ、権利は権利! あこがれの「ユナイテッド航空 レッドカーペットクラブ」を使用させてもらうことにした。ここではパソコン用の電源も使いたい放題! 国際電話もタダ! 電話回線をネット接続に利用することも出来る。ソフトドリンクにスナックがタダユナイテッド航空のラウンジ内部で飲み放題、食べ放題!

天国のような…というと大袈裟だが、とにかく右手と右足が一緒に出てしまいそうなくらい緊張しながら入室した。Dバッグに入れているノートパソコンを取り出した時、パソコン用のACコードを預け荷物の中に入れてしまったことに気付いた。「でも、まぁパソコンの内蔵電池の充電は100%だし…」ということで慌てもせず、WindowsXPを起ち上げて…そこで重大なことに気が付いた! AirH"もACコードと同じケースに入れたままだったんだぁ〜っ! ダイヤルアップ用の設定もしていないため、結局、ネットにアクセスすることの出来ない環境のパソコンを前に、このサイトの更新をせっせかしていた私であった。何だか、とっても情けない…。どこへ行っても、どうも私のオッチョコチョイぶりは変わらないらしい。

私が搭乗するUA883便は19:00に出発と表示されていたが、チャックイン時に「実際は、その15分前…すなわち18:45には滑走路への移動(タキシングという)を開始しますので、気を付けてください。予定搭乗開始時間は18:15です」と言われていたので、18:00にはレッドカーペットクラブに別れを告げ、搭乗ゲートへ向かった。途中、民放各局の取材陣で固められた動く歩道を通る。ははぁ〜ん、芸能人の国外移動ラッシュを取材に来たんだなぁ…と思いつつ、誰か芸能人が来ていないかと、キョロキョロしてしまった小市民な私…。

18:15になっても搭乗案内がない。このUA883便はシカゴから成田経由のソウル行きなのだが、どうやらシカゴからの到着が遅れ、そのために機体の整備が遅れてしまったらしい。そのため、20分遅れで搭乗案内が入ることになる。「ファーストクラス、ビジネスクラスご利用のお客様から先のご搭乗となります」というアナウンスと共に、搭乗一番乗りを果たした私! 他を寄せ付けない早さで搭乗ゲートをくぐり抜け、機内へ! 男性客室乗務員が私を見るなり、怪訝そうな顔をする。私の座席は9Aという所なのだが、どこにあるのかわからない。その乗務員は、迷っている私に「奥に行ってください!」と言う。どうも、私をエコノミークラスの乗客だと思ったらしい。それは別に構わないのだが(通常は、私もエコノミークラスの乗客なのだから)、とりあえずチケットの色が違うことを確認してくれ! そして、ここでまた重大なことに気付いた! すっかり韓国語モードに入った私であったが、ユナイテッド航空の公用語は英語…つまり、ここで英語モードに戻らなくてはならなかったわけである。韓国語に占拠された頭を英語に戻し、「Where is the configularion of this seat?」と聞くのがやっと。それから、ウェルカムドリンクサービスが始まり、「お飲み物は?」と聞かれ、ついいつものクセでコーラを頼んでしまった。が、私には、「ユナイテッド航空に乗ったら “7UP” を頼む!」という楽しみがあったことを思い出し、すぐに訂正を入れる。

年末の観光シーズンとはいえ、空席が目立っていた。ファーストクラス担当の女性客室乗務員が「ファースト(クラス)、誰もいないわよ…」とぼやいていた。ビジネスクラスも私を含めて5名のみ。何とも寂しい環境であった。

19:00、タキシング開始。ゆっくりゆっくり滑走路へ移動し、19:15に離陸。成田から九十九里方面に一旦出て、旋回して横浜上空を通過し、そこから富山県方面へ機体の向きを変え、日本海を抜けて朝鮮半島へ入るルート。気流の関係で、通常よりも30分ほどフライト時間が増えるという機長のアナウンスが入る。ソウルへの予定到着時間が21:42と発表された。

機体が水平飛行に入ったところで、さっきの男性客室乗務員が「今日の軽食は、2つの中からチョイスをお願いします。1つはJapanese Sushi、もう1つはコールドビーフのベーグルサンド、どちらにいたしますか?」と言う。こういう場面で寿司をチョイスしてはずれる確率は極めて高い。それに、今年最後の日本食は…ということで、コールドビーフをためらいもなくチョイス。

機内では、個別のモニターでエンターテインメントを楽しむことが出来る。私が見ていた韓国のアリランTVのプログラムで急に、カナダで制作されたギャグの番組が挿入された。これがなかなか面白い。見ながらメモをとっている私を、横に座っていた推定アメリカ人がいぶかしげな目で見つめていた。

21:42、予定通り仁川(インチョン)国際空港に着陸。しかし、韓国系航空会社が優遇されているようで、着陸滑走路から遠く離れたエプロンへと延々タキシングが続く。

入国審査をあっという間に通過し、荷物も一番最初にピックアップ出来た私は、金光哲(キム・グワンチョル)さんに電話を入れた。22:20分に模範タクシーの乗り場で合流することになる。出口を抜けると、出迎えの人、人、人…。何だか自分が有名人になったような気がするのだが、その反面でとても照れくさい。出迎えの人々を抜けると、今度はタクシーの客引き。いつもそうである。日本人目当てのタクシー運転手が、日本語で呼びかけてくるのである。そういう時は、韓国語で「友達と約束があるから」と言って相手にしない。が、今日は例年と様子が違った。冬だから? 「友達が来てくれるの? 車はいいよ!」などと言ってくる。こちらも負けず、「友達は、車で来るから」と言って逃げる。空港の外に出た。シャレにならないほど寒い。いきなり製氷倉庫に入れられたような心地。唇が、頬が、パシンパシンとはたかれたような感じである。吐く息が白い…なんてものではない。吐いた息の白さで、目の前が見えなくなるのである。が、こんな寒さを予期して購入しておいたダウンコートが役立った。それに、私にはマフラーや帽子、手袋の用意もある!模範タクシーの乗り場でも、客引きに遭った。「友達と約束があるから」と言う私に、「ここで?」と切り返してくる運転手たち。中には、英語で話しかけてくる運転手もいたが、それにも頑として韓国語で返す私。「友達はタクシーで来るのか?」と聞いてくるので「そうだ!」と答える。しかし、「ここで、友達がタクシーでピックアップしてくれるのか?」と聞いてくるので、「友達は、タクシーの運転手だ!」と答える私。そこへ金さんが登場。「あっ、友達が来た!」と運転手たちに言うと、「気を付けてな!」と私に手を振ってくれた。まだまだ、韓国には人情が残っているようである。

金さんと8ヶ月半ぶりの再会を喜び、ソウル市内へ向かう。色々と話は尽きないのだが、まずは宿泊先であるサボイホテルへ向かうことにした。ソウル中心部では、新しい年を迎えるためのイルミネーションが美しい。韓国は旧暦で正月を行うため、1月1日は大したイベントがない。が、大晦日は盛大に行うらしい。そのためか、美しいイルミネーションが木々を、ビルを包み込んでいた。

サボイホテル到着が23:30。チェックインを済ませて部屋に荷物を置きに行った。そしてパソコンをホテルのLANに接続する。問題なくパソコンがネットワークを認識し、自宅以上に快適な環境でアクセスできるようになった。韓国は、日本以上にIT大国、インターネット先進国である。

再び金さんのタクシーに乗り込み、鐘路(チョンノ)へ。金さんが「これ以上に美味しいチヂミ(韓国風お好み焼き)はない!」と太鼓判を押す店に案内してもらうことになったのである。その店は「鐘路ピンデトック」という。「ピンデトック」とはお好み焼きのこと。ところが、ここのお好み焼きは「焼き」といういより「揚げ」という感じである。表面がパリパリしていて心地よい! 深夜だというのに、客足が絶えない。金さん曰く「この店を買い取ったら、私は働かなくても大金持ちになれる!」というくらいににぎやかな店内で、激しい口調で語り合っている酔っぱらい3人組を見つけた。「兄ちゃん、酒がマッコルリが来てないよ!」と注文も忘れずに、それでいて熱く語り合っている。日本では見かけなくなった光景を見た。若いカップルが、明日の予定を立てながらチヂミをつついている。このところ、狂牛病だの口蹄疫だので、韓国でも牛肉を敬遠する傾向が強くなり、焼き肉が盛り下がりつつあるという。そこで、豚肉の消費が多くなった…と金さん。データをもとに語っているのではないが、タクシー運転手という職業上の分析だろう。日本でも同様の傾向があることを金さんに伝えると、「だから、肉は怖いんですよ」という返事。金さんお奨めのチヂミは2種類あった。「肉チヂミ」と「牡蠣チヂミ」。この肉は紛れもなくブタであった。牡蠣好きの私としては、韓国で牡蠣を食べられるとあって、大満足!

24:30、金さんのタクシーでホテルに戻った私は、金さんに頼まれて日本から買ってきた電動歯ブラシを渡し忘れていることに、部屋に戻るまで気付かなかったのである。

こうして、やはり私の渡韓は珍道中で始まった。